01





『待ってー!やばいんだけどー!』


なんもやばかねーよ、別に普通だろ...なんて俺の独り言も虚しくなまえはその他大勢に紛れながらも紛れられていないほどの大きな声で叫び倒している。


『神さーん!!神さーん!!ステキー!!』


キラキラッとした眩しい瞳で俺の隣にいる神さんにロックオン。神さんは神さんで慣れたように「なまえちゃん、ありがとう」だなんて完璧なファンサービスで答えている。


『キャーッ!!やばいやばい!!イケメンすぎ....』


その場に膝から崩れ落ちかなりの声量で「今のであと30年は生きられる...」だなんて独り言らしい叫びを口にしている。ハァァ...だなんて胸に手を当てて余韻を感じているのか、目をギュッと瞑ったままだ。


『無理...神さん本当に好きすぎる......。』

「なまえちゃん、全部聞こえてるよ。」


ニコッと微笑み付きで神さんにそう言われたなまえはハッとして顔を真っ赤に染め「お恥ずかしいです...」なんて両手で顔を覆っている。何今更可愛こぶってんだ馬鹿野郎め。まもなく休憩が終わり再びフロアに戻る俺たちに向かってやっぱりなまえが「神さん頑張ってくださーい!」なんて誰よりも大きい声で叫んでいた。


「...マジでなまえの野郎...今日こそ許さねーぞ...」


勝手に意気込んだ俺に隣にいた神さんは「嫉妬だなんて醜いよ」なんてサラッと言い逃げするもんだから俺は思わず拳を握りしめた。


別に神さんが嫌いなわけじゃない。むしろ大好きな先輩だ。俺だって女だったら確実に神さんか牧さんに惚れるだろうし。だからなまえの気持ちもわかる。神さんは男の俺から見たってかっこいいんだから。


けれども、だからといって簡単に「そうだね、神さんかっこいいよね」なんて同意できないのには訳があった。














「...帰るぞ、なまえ。」

『神さーん、お疲れ様でしたぁ......!』


俺の声により神さんにフリフリ手を振って後ろをついてくるなまえ。


『どうしよ...また明日って言われちゃった...!』


にひひ...と笑みが溢れたなまえに視線を向ければ俺と目が合うなり「お疲れ様」なんて穏やかに微笑んでくる。それを見た瞬間俺の心は途端に浄化し穏やかなものとなり、全て忘れて「おぉ」なんて返事してしまうのだ。


いかんいかん...俺は今怒ってたんだ!!


「...なまえさ、いい加減に......」


神さんの名前ばっか呼ぶのやめてくんねーかって言えたらよかったのに。今日こそ言えたらよかったのに。「うん?」なんて俺の顔を覗き込むなまえに胸がドギッと高鳴り顔が熱くなる。


『...どしたの?信長?』


グッと距離を縮められ、自分の真っ赤であろう顔を隠すようになまえにチュッとキスを落とす。照れ隠しで余計恥ずかしいことをしちゃう俺、本当に馬鹿なのだけれど。おかげで余計にドキドキうるさいし...。


『....もう、外だよ....?』

「....なまえが悪い。」

『なんでよ...?』


...ほら!そういうとこだよ!無意識にやってる全てが可愛いんだよ、馬鹿め.............。


「わかんなくていい。」


なまえより一歩前を歩き熱を冷ますようにして「ふぅー」と息を吐けば後ろからバタバタと追いかけてくるような音と共に「今日もスリー絶好調だったね!」なんて楽しそうな声が聞こえてきた。


「......俺スリーなんて打ってねーし.....」

『何言ってんの?神さんに決まってるじゃん!』

「出たよ神さん..........」


俺の呟きは届いていないらしくあっという間に自分の世界に入ったなまえが「今日も爽やかイケメンだったなぁ」なんて目をハートにして呟いている。時たまぼうっと空を見上げてはポッと頬を赤く染める。いや、今何思い出したんだよ?!なんでそんな顔真っ赤になるんだか不思議だよ...馬鹿野郎め.......


『信長何話してたのー?休憩の時すごい話してなかった?』

「話してねーよ...別にあんなの普通だし...。」

『えぇー?羨ましいの塊だよー!』


私もそんなこと言ってみたいなーなんて相変わらず空を見上げてニヤつくなまえ。


「もう...ほら、真っ直ぐ歩け。電信柱ぶつかんぞ。」

『あ、ごめっ...神さんの魅力が私を誘惑してくるから
...』

「...んだよそれ、気持ち悪いな...。」


今度の呟きは届いたらしく「何?!神さんが気持ち悪い?!」なんて叫び始めるなまえ。あぁもうめんどいな本当に...。つーかお前マジでいい加減にしろよ...


「気持ち悪くねーけど魅力とか誘惑とか意味わかんねーよ!」

『わかるでしょ!神さんなんて魅力の塊じゃん!』


なんでもできる完璧マンだし...なんて再び顔を染めるなまえにとうとう苛立ちを隠せなくなった俺が声を上げてしまう。


「お前...一体誰の彼女なんだよ!!」


そんな俺の声を聞きなまえは途端にキョトンとした顔をする。そして俺を不思議そうに覗き込みながら口を開くのだ。


『...?私?』


全くと言っていいほどなまえには響いていない俺の嫉妬。


『私は信長の彼女だけど.......?』


何の悪気もなくただわかりきっただけの愚問に答えたなまえとストレートな返事に自分で聞いたくせに真っ赤になる俺。は?なんだよこれ...。


『どうしたの?自分が誰かわかんなくなっちゃった?』

「........んでもねーよ、こっち見んな.........。」


俺の大好きななまえ。


中学から同じで卒業前から付き合い始めた俺の大好きななまえ。基本どんなことでも許せてしまうくらい、俺にとって大切で、何より最高に可愛い。もう可愛い以外言葉が必要ないくらい。可愛いはなまえの為にある言葉だって信じてやまないくらい。


けれどもこれだけは許さない。


「...なまえ、あんま神さんばっか見てんなよ。」

『...へ?』


だってこの子は、俺の彼女だから。


「...お前、俺の彼女だろ...。」

『...?神さんかっこいいじゃん。信長も思うでしょ?』

「......まぁ.......。」


ほらーなんて可愛く笑うなまえに、結局俺はやられてしまうのだけれど。














悲しくともこれが君と僕の日常


(ねぇ、神さんって普段何食べてるのかな...)
(...は?)
(ベジタリアンかな?何食べたらあんなかっこよくなれるのか気にならない?)
(...........)













Modoru Susumu
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