06




** 最終話







南がそれはそれは意味がわかんないくらいめちゃくちゃに私を抱いた日、結局付き合うという選択を取れずにハッキリと明言はしなかった。南はそれにやっぱり気付いていて「落ち着いたら返事聞かせて」と言い泊まるとまた襲いそうだから、と冷静になる為に夜中に家へ帰って行った。なんだったんだろう。急に来て急に帰った。嵐かな。







土曜日の昼頃、私は午前中のみのシフトを終え家でくつろいでいた。大学の課題に少し手を出しながらもなかなか集中出来なくて、家にいても仕方ないから外に出ようと着替えている時だった。


『…南、どうしたの?』


インターホンが鳴ると同時に急いで扉を開ければ南がいた。相変わらずセンスのいい服を着こなしている。


「デートの誘いに来た。何、用事でもあるんか?」


可愛い格好して…と続けた南。いつか栄治が選んでくれたワンピースを無意識に着ていた自分に気付いてハッとする。あれ以来このワンピースは自分の中で特別になっていた。


『少し出かけようかと。課題に息詰まったの。』

「ほんならちょうどええわ。お供しますわ。」


最近の南はなんだか。可愛い」が増えた。以前はクールでつかみどころのないイケメンって感じだったのに、最近はよく笑うしよく喋る。こうなった原因も全部私だけを見ているからなのかと思うとやっぱり胸が苦しくなる。


『じゃあ下で待ってて。髪巻いたら行く。』

「わかった。はよしてな?」


急いで髪を巻いてやっぱり手に取るのはあの日栄治が選んでくれたコート。それにショート丈のブーツ。お気に入りの鞄を持って家を出る。マンションのエントランスにポケットに手を入れた南が立っていてなんだかその立ち姿すらも様になり言葉を失う。


そう言えば、二人で外歩くの初めて…?


ずっと南と一緒にやりたい、と思っていたことが一つずつこうやって叶っていくのかな…そう思うと悪くないな…と思ってしまう自分がいる。


「お、可愛いやん。行こか…気分転換や。」


手を差し出してくれる南に自分の手を恐る恐る伸ばしてみる。まだ届かない位置なのに南の方から迎えに来てくれて優しく繋がれた。これも初めてだ。外で堂々と手を繋ぐなんて…またひとつ胸が高まった。


歩き始めたその時、私の耳には聞きなれた声が届いた。

















「行くな!なまえ!」


その場に立ち止まり後ろを振り返る。南との手は繋がれたままだ。

こちらへ向かって走ってくる栄治がいて、私は瞬時にその手を離そうと試みたものの、南がそれを許してくれなかった。


「離さへんよ。」

『南…あのっ…、』

栄治は私の目の前に止まり肩で息をしながら私を真っ直ぐ見つめてくる。なんて言えばいいのか、こんな状況を見られて、なんて言い返せばいいのか、もう何もわからない。


「…行くなよ、なまえ。」


栄治の低い声が辺りに響く。


『栄治…』

「俺が選んだ服着てどこ行くんだよ、馬鹿野郎。」


何故だか栄治は笑いながら私のおでこにデコピンした。


『痛っ、』

「前に言ったよな、どうしようもないくらい好きな相手なら、ソイツの幸せを願わなきゃいけねーって。」


栄治は真っ直ぐ私を見る。コクリと頷いた私に栄治もまたコクリと頷いた。


「だから俺はなまえの幸せを願って…、絶対どこにも行かせない。」


栄治はそう言うと強引に私の手を南から引き離した。あまりの力の強さに驚く。


『栄治…』

「なまえがコイツと一緒にいて、幸せになれる日は一生来ない。」


栄治は瞬きもせずに私を見つめる。


「始まりが「友達」じゃなかったからだ。」


それが意味することを瞬時に理解して泣きそうになった。栄治は今度は南に視線を向けた。


「それが永遠に付き纏ってその呪いからなまえが開放される日は来ない。」


南は何も言わずに栄治をただただ見つめていた。無表情で口を閉じたまま。


「なまえを傷付けた時点で、お前の負けだよ。」


高校生の栄治が大学生の南相手にそう言い捨て私の腕を取りマンションへと戻っていく。


残された南が気になって、私は抵抗気味にその場に立ち止まろうとする。待ってよ、止まって!と声をかけるものの無視され、止まったと思えば瞬時に栄治に怒られてしまう。


「アイツのことが好きなら、何でその服手にしたんだよ。」

『栄治、』

「アイツの彼女になれて嬉しいんなら、もっと幸せそうな顔してろよ。」


苦しそうな栄治の顔。目には涙が溜まっていた。


「俺には全部「助けて」って言ってるようにしか見えねーんだよ!なのに、何で立ち止まるんだよ!」


あげられた声に、私は考えるよりも先に口を開いていた。


『まだちゃんと言ってないんだもん!自分の口で、ちゃんと南のこと、振ってないんだもん!』

「…は?」

『待っててよ、しっかり終わらせる。栄治のこと好きだって、南に言ってくるから。』


呆気にとられたような栄治を置いて私は南に駆け寄った。南の目からは何故だか一筋涙が流れていて、それはそれはとても綺麗で美しさすら感じるほどだった。


『南、私ね…』

「…わかっとった。なのにわからんふりしとった…ごめん。」

『そっか…南、今までありがとう。』

「ほんまにごめん…頼むから、幸せでいてくれ。」
















『ちょっと、栄治っ…まだ昼なのに…』

「無理。俺の彼女でしょ?黙って抱かれてよ。」


語尾にはたくさんのハートが付いている。正式に告白を受け栄治と晴れて恋人同士となった。せっかく出掛けようとワンピース着てたのに。あっという間に脱がされて気付けば上半身何も身につけいない。あれ?下着は?


「あぁーもう挿れたい、やっば…」


あまりにも存在感のある栄治のソレは今日も今日とて抜群に元気で。若いとは素晴らしいね。思春期万歳。


『栄治…デートしに行かないの?』

「もう裸なのに何言ってんの。無理。」

『もうすぐクリスマスだから街も賑わってるよ?』

「俺らの方がいつでも盛り上がってるよ。」


黙って俺に抱かれてなさい。


人差し指を口に当てられて、悔しくなってその指に噛み付いた。栄治はというと呆気にとられた顔をしながら途端にニヤニヤし始める。何、怖い…


「やっばい、それ。俺のこと食べたいの?」

『…馬鹿なの、栄治。』

「馬鹿だよ。なまえしか見えないただの馬鹿。」


ニッと笑った栄治が可愛くて愛おしくて自分から口付けすれば栄治はそれはそれはとても嬉しそうに応えてくれる。裸同士だということもすっかり忘れていて、そのまま栄治に火をつけてしまった流れで抱かれる羽目になった。とんでもない一日だったことは、もはや言うまでもないだろう。


もうすぐクリスマス。私たちはクリスマスこそ絶対に外でデートしようと決め、貴重な土日にドロドロとした濃厚な時間を過ごしたのだった。


「なまえ、ずっと俺の隣にいてね。」

『うん!栄治もね…離れたらダメだよ。』

「…もう絶対一瞬も離れない。トイレにもついてく。」

『うん、そこは離れて?』














僕らはまだまだ旅の途中


(なまえ〜〜俺高校やめて大学生になっていい〜?)
(…とりあえず病院行こっか。)
(俺多分なまえ病だわ。なまえしか見えない、可愛い、無理、しぬ。)









あとがき

短い連載でしたがラブ・トライアングルにお付き合い頂きありがとうございました!クリスマスに終わらせるという目標を無事何とか達成致しました!

南くんは一見悪い男なんだけども、そこには少しだけ事情があったり、そして彼のスマートなかっこよさがカバーして結局は南くんなら何でもアリ!と皆様に思わせちゃうくらいの男に仕上げようと意気込みました。結局は結ばれないけどそこがまたポイントだったりする。。どんなにかっこよくても少しの不安が命取りってこと( ˙-˙ )です( ˙-˙ )ダメなものはダメ。
エイジ沢北は連載系は初登場!なかなかのいい男になったのでは( °_° )。年下で思春期万歳のエロ要素あるのにまっすぐで優しくて大人っぽい一面もある幼馴染役を探していたら誰も当てはまらなくて。。流川くんにやらせようかと思ったけど荷が重いと思いながらまだまだ何の役もやらせてない無限大の可能性があるエイジを抜擢しました!いいチョイスだったと思います。。
少しでも楽しんでいただけたのなら嬉しいです。お付き合い頂きありがとうございました( *_* )!メリークリスマス!!





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