B





『痛いよ宗ちゃん...』
「いいでしょお邪魔虫たちに知らせないと」
『みんなもう知ってると思うけど...』


ある日の放課後、なまえは神のベッドの上にいた。相変わらず狂ったように抱かれガブリと首筋を噛まれた。くっきり残るその跡にいよいよため息が出そうになる。満足そうに笑う神の身体は引き締まり筋肉はあるのに細くて綺麗で何度見ても目眩がしそうだった。

あれ以来、時たま放課後陵南の仲間たちと出かけたり遊びに行ったりなんてこともできるようになった。なんだかんだ言っても神は自分の仲間たちを認めてくれているようでなまえは嬉しかった。まぁ帰ってくるたびに抱かれて今のようにガブリと跡をつけられるのだが。


「さて、部活に顔出す時の挨拶考えないと」
『なんか寂しいね、もう高校生が終わるなんて』
「...さっさと終わればいいよ」


ベッドの下に散らばったなまえの制服を見ながら神はプイッと顔をそらした。卒業式を3日後に控えていた2人はとうとう大人の仲間入りをするところまで来ていた。とはいえやっていることはもう立派に大人なのであるが...。

今度こそ同じ大学を受験しなければとうとう神がどうなるかわからなかったなまえは神が推薦をもらった大学を大人しく志願しアッサリと合格していた。何を隠そうなまえも神もかなり頭が良く勉強が出来るのである。神はバスケ推薦ではあるがなまえの学力を考え数多くもらった推薦の中から偏差値が高い大学を選んだのだった。



「ついにまた同じ学校に通う時が来た」
『ふふ、でも朝練あるでしょう?一緒には行けないかもしれないよ』
「何言ってるの?早く着いても教室で勉強でもしてればいいでしょ?」
『...ハイ』


神の態度は相変わらずだったがなまえもまた同じ大学に通えることが嬉しかった。周りにまた迷惑をかけたりなんてことのないよう、今度こそしっかり自己管理をして...そんなことを考えていたらふいに唇を奪われた。


『わっ...どうしたの?』
「なまえは俺だけ見てればいいよ」
『わかってるよ宗ちゃんの彼女だもん』
「今までもこれからもずっとね」




***




「なまえ!」
『わ〜宗ちゃん!モテモテ〜!』
「少しはヤキモチ妬きなさい」


卒業式当日。式を終え部活での集まりを終え、ブレザーのボタンが全部無くなりワイシャツのボタンまでとられボロボロにはだけた格好の神が陵南高校へやってきた。中央階段のところで集まる5人組の元へ駆け寄る。同じくボロボロになった仙道(ベルトや卒業式の為につけられた花までとられていた)や何故かきっちり第2以外のボタンが揃っている越野の姿も見え普段ならイラつくはずの自分も今日は特別なのか心が穏やかであった。


「第2は取っておいたよ、ほら」
『ありがとう、見て、みんなのもあるの』


なまえは今日の神なら大丈夫だと瞬時に判断した。右手に握っていたそれをパッと見せるとそこには越野仙道福田植草の第2ボタン。1つだけ違う柄の第2ボタンがそこに加わりなまえはそっと両手で包んだ。


『終わったね、高校生活』
「色んなことがあったね...」
「とにかく最高だったよ...」


夕日を見上げ仙道と越野がそう呟いた。神も同じように空を見上げた。自分の彼女と敵チームの奴らと見る空はなぜか見たこともないくらい綺麗だった。もう戻らない日々をつらつらと思い出す。その横にはなまえと牧と信長がいた。あぁ、確かにちゃんとある。今までもこれからも、俺は変わらない。高校生活は終わるけど、俺たちは変わらない。


『ずっとね、宗ちゃんにも見せたかったの』
「俺?」
『陵南から見る夕日が綺麗でね、いつもみんなで部活帰りに絶対全国行くぞって叫んでたんだぁ』


まさか本当に一緒に見れる日が来るなんて思わなかった。ここは陵南高校だ。ましてや男にうるさい神と自分の大切な仲間たちと共に夕日を見る日が来るなんて。なまえの目からは涙がこぼれた。


『ありがとー!陵南!宗ちゃーん!大好きー!』


夕日に叫ばれたその言葉はひどくこだました。明日からもうこの制服を着ることはない。ここに来ることも、みんなと話をすることも、陵南高校の学生でいることも。

寂しくて悲しいのになぜか気分は晴れていた。ここからまた始まるんだ。みんなそれぞれ自分の道を行くんだ。いつかまたここに集まればいい。その時最高のお土産を持って来られるように自分の居場所で頑張るんだ。


『毎年6人で集まろうね』
「俺も?」
「当たり前でしょ、”宗ちゃん”だもんな?」


その呼び方がなまえにとって特別な存在であるということを仙道は指摘した。当たり前のように自分を受け入れた仙道に神は驚いた。なんだよ?俺も仲間か?


「一緒にはいなかったけど常にそばにいたような気がするからな」


存在感がデカすぎて。
越野のその言葉に神はピクッと肩を揺らした。なまえがそっとその肩に手を置くと笑顔のなまえと目が合う。

「だから神も俺らの仲間だ。異論は認めない」


仙道の言葉に神は口角が上がった。なまえはとてもいい仲間を持ったもんだとひどく感心した。

よかった、隣にいてくれたのがコイツらで。

本当はそう思っているけれど胸の中に閉じ込めておいた。今はまだ言うべき時じゃない気がしたから。













たくさんの愛を込めて!

(大好きなのは俺だけでしょ)
(...宗ちゃんそこはスルーでいいよ)








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