清田





『内緒にしてるの、ダメ?』
「んでだよ?俺が彼氏で恥ずかしいのか?」
『違うよそうじゃなくて...』

“ノブがこの間桜木くんと流川くんとやり合ったせいで海南=失礼な野猿とジイみたいなイメージがついてて...”

「やっぱりそれ恥ずかしいんじゃねぇかよ!」
『ちっ、違うよ!からかわれたくないの』

“純粋な好きな気持ちを馬鹿にされそうで嫌で...”


信長は真剣にそう言ったなまえに渋々頷いた。彼女の願いならば仕方ない。自分の存在を周りに秘密にしておきたいなんてすごく傷付いたが理由があるのなら仕方なかった。

湘北でマネージャーをしているなまえは信長よりひとつ年上だ。中学が同じで当時からずっとずっと彼女に片想いして何度も振られたが信長が高校に入学すると同時に付き合うこととなった。8回目の告白でやっとだった。

自分は先輩たちに言いふらしていたが彼女は違った。まだ誰にも言ってないのだという。


「ま、いーやこうやって一緒に居られるし」
『ふふ可愛い可愛いノブちゃん』
「ヤメロ俺は子供じゃねーよ」


いい子いい子されてついつい頬が緩むものの口ではヤメロなんて言うところが子供なんだと自分でも思うけれど気持ち良くてにやけてしまう。同じ時を過ごせるだけでいい。昔喉から手が出るほど欲しかったこの人はもう俺のものだ。それだけで充分。そう言い聞かせた。あの瞬間が来るまでは...


**


「ちどり荘...ここか」


インターハイが始まり豊玉に勝った時のなまえの姿を見て信長は心の底から嬉しそうに笑った。桜木流川には憎まれ口叩くけど正直湘北は自分の大切ななまえが大切に思っているチームだ。負けて欲しいわけがない。

試合後に訪れた宿泊所。入り口に差し掛かる途中、人影が見えそこから聞こえる声に思わず身を隠した。なんだ?誰だ?


「何度も言うけど好きだ」


何度も?!信長はその一言にひどく反応した。自分自身も8回目でようやくいい返事がもらえた立場だったからだ。よく頑張ってるよお前、誰かわからない相手にそんな風に思っていてふと冷静になった。ちどり荘で告白?湘北の奴らだよな?え?告白されてる相手って...女だよな?

まさか...!?


『ごめんなさい、本当に申し訳ないです』
「またダメかよ...なんでだよ?今日も頑張ったんだけど」
『それはいつも見てますよ明日も勝ちましょう』
「明日勝ったら付き合ってくれよ」


どどどどど?!どんな告白?!あぁーーー!やっぱり!!!

信長は告白されている女を見てガクッと肩を落とした。やっぱり思った通りなまえだったからだ。何を隠そう自分の彼女であるなまえである。何度も言うけど俺の彼女ね?俺だけの!


『出来ないですごめんなさい』
「んだよーそんなに勉強が大事か?」
『やること多くて忙しくって』


断っているのはいいが理由が何とも腹が立つ。信長は疑問に思った。ここで俺がいることを言わない理由は何だ?何故隠すんだ?浮気しているのならまだしもそうじゃないのに何で言わないんだ?ところで背中が向いていて見えないその男の顔を何とか確かめようと少し場所をずれる。するとハッキリ見えた見覚えのある...


(みっ、三井寿...!)


信長はとっさに影から身を乗り出そうとしたが留まった。別の男の声が聞こえたからである。


「...なまえセンパイ」
『あれ?どうしたの?』
「いないから探した」
「んだよ邪魔すんなよな!」


姿を見なくてもわかる。その声は俺の大嫌いな流川だな?信長はそう思いながらジッと様子を見ていた。あろうことか流川はなまえの腕を引いて三井の元から奪い去ったのだ。まるで自分のものかのように。ま、まさかなまえは流川とデキてる...?!


「ゴラァ流川!なまえに触るな!」
『へっ、ノブ?!』


その瞬間信長は飛び出して流川の手を思いきり叩いた。なまえの手を取り彼女を引きずりながらずんずん歩いて行く。呆気にとられた三井と流川はその場でどんどん遠ざかる2人の後ろ姿を黙って見つめていた。



「おいどういうことだ?!」
『ノブいつからいたの...』
「んだよ今の?!どういうことだって!」


ハァ、とため息をついたなまえがポツリポツリ話し出した。

復帰してからすぐ三井に告白されたこと。それをもう何度も断っていること。流川にも好意を持たれていること。いつもあんな感じであるということ。


「だったら俺のこと言えばいいだろ?!」
『言えないよ何されるかわかんないもん』
「何でだよ?どういう意味だ?」
『ノブに何か被害が行ったら困るの!』


私の大切なノブが誰かに傷つけられるようなことがあるならそんなの耐えれない。


「別に何もされねぇよ?俺は大丈夫だから」
『違うよノブあの2人だけじゃないの』
「...え?」


翔陽の藤真さんにも陵南の仙道くんにも告白されたの。


「...?!何その神奈川代表みたいなメンバーは」
『怖いの、藤真さんが1番、お前に彼氏が出来たならその時はそいつが誰であろうと...』


一生お前に会えないようにしてやるから


その言葉を聞いて信長は背筋が凍った。彼女は確かに自分を守ろうとしてくれていたようだった。誰か1人に言ってしまうと噂ですぐ広まると思ったと。手に入った喜びからなまえがモテるということをすっかり忘れていた信長は改めて恋の怖さを知った。


「俺は大丈夫だから、正直に言ってほしい」
『うん、わかった。ノブがそう言うなら...』


その後信長がたくさんの輩から目をつけられ生きづらい毎日を送ることとなったのは言うまでもない。特に国体は地獄であった。スタメンどころかずっとベンチ、に加え1人だけ倍以上のメニュー。












それでも俺は絶対負けねーよ!

(よっしゃどっからでもかかってこい!)





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