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「いらっしゃい。中でお父さん待ってるわよ。」


何度か顔を合わせたことのあるなまえとそっくりな母さんに出迎えられて家へとお邪魔する。「藤真」と表札が立ったそこは相変わらず豪邸で玄関にはデカい花瓶に綺麗な花が飾ってあった。





なまえさんからなまえに呼び名が変わったのは2年ほど前で俺にもそろそろ後輩が入社してくるって時期やった。急速に距離を縮めていったなまえに何故だか残業の時に告白した俺。彼女は笑って「よろしくお願いします」と言ってくれた。


結婚の挨拶なんてもちろん俺にとっては初めてやしなまえも初めてやろうしなんやえらい緊張すんなぁ。


お父さんはやっぱり顔が整っていてご両親のDNAが最強すぎると俺は震え上がったわけや。












「あ...南来てたんだ。」


グッ........。そうやで。問題はここからや。なまえのご両親はもうクリアしたからええとして......


「ひ、久しぶりやな、藤真.......」


なまえが「健司に南くんと付き合ってること言ったよー」なんて呑気に笑って言ってたのがついこの間。仲はいいらしいんやけど地元で就職した藤真とは離れているしさほど頻繁に連絡を取ることもなかったらしい。やっとのことで言ったのがこの間なのに結婚の挨拶なんて言うたら..........


「おう。で?遊びに来たのか?」
『違うよ健司。』


遊びに来たなんて大間違いだーなんて呑気に笑ってるなまえ。それもそうや無理ないで。遊びどころか超大真面目。重大な話しに来たんやから。


「.....スーツで来るってことは....まさか......。」


藤真はポリポリと頭を掻きながら俺を指差して震えだした。よく見りゃコイツ寝起きか?髪ボサボサやしスウェットだらっだらやないか。


なんや、男前できっちりしてたイメージやのに....えらいだらしないなぁ.....。









「結婚の挨拶に来たんや.......」


俺がそう言えば藤真はパカッと大きい目をさらに見開いて俺を見つめた。しかし口は閉じたままで何かを言ってくるわけでもない。








しばらくの沈黙の後藤真はだんだんと俺を見る目を細めていき最後には睨まれるような形になった。


『え、何その顔.....ていうか言いたいことあるなら早く言ってよね。時間もったないじゃん。南くんせっかく神奈川来たのに....。』

「なまえ本当に南と結婚するのか?大丈夫か?嫌なことあったら八つ当たりに肘打ちされるなんてことは.....」

「そんなことないわ!!何言うてるんお前....!!」

「お前....?義理とはいえ弟様に向かってお前だと?!」


途端に藤真は本性を現したかのように舌打ちしながら俺に詰め寄ってくる。な、なんやねんコイツ...!!


「知ってんのかなまえ、コイツ高2のインハイで俺に.....」

『知ってるよ。でも昔のことだしそんなのどうでもいいよ。』

「どうでもいいわけねーだろうが!!お陰様であんなとこで負けたんだぞ俺ら。インターハイにはろくな思い出がねぇんだ.....8割方お前の責任だ南!!」


ポケットに手を突っ込んでズカズカ近寄ってくるその姿は完全にチンピラわや....。


『残りの2割は健司が牧くんに勝てなかったからでしょ。人のせいにしないで。南くん行こう。』


グッと腕を掴まれなまえに引っ張られる。素直に従って玄関へと向かえば「待ーてーよー!!」なんてあまりにも恐ろしい声が聞こえてくるわけや。後ろから。


「まだ話は終わってねーよ!なまえにはお似合いの相手がいるんだから今からでもお前は引き下がれこの悪質肘鉄男!!」

「なんやねんほんまに......誰やそのお似合いのなんちゃらって!!」

『気にしなくていいよ。健司が昔から勝手に騒いでるだけだから。』




.......いやいやいや、そないなこと言われたら気になるやんな。悪質肘鉄なんちゃらはとりあえずスルーしてその男が誰なんか.......うわっ、なんやねんこのモヤモヤは!!


「俺が決めた婚約者、花形透にしろって何回言えば聞くんだよなまえ!!バカ姉貴!!」

『花形くんにも選ぶ権利あるでしょうが。自分の損得で人の旦那を決めるなバカ弟め。一生バスケだけやってろ選手兼監督!!』


そう言うとなまえはさっさと玄関を出て扉を閉めた。俺の腕を掴んだまま。


なんやビックリした....なまえってあんなにベラベラ早口で話すんやな.....しかも結構対抗してたからか普段聞かへんような言葉遣い....なんか新鮮......


『ごめんねほんっとにうるさくて。普段は仲良いんだけど男関係がうるさくてね......』
「いや、大事にされとる証拠やん。」
『どうだかね....健司の言ったこと何一つ合ってないから気にしないでね。』




さ、横浜を案内しようかー!なんて張り切って俺の手を引っ張るなまえ。



「なぁ、」
『うん?』
「改めてやけど.......これからもよろしくお願いします。」
『......こちらこそ、よろしくお願いします。』



ニコッと笑ったその顔が時たま藤真とピッタリ重なってゾクッとする瞬間もあるけれど....それでも俺はこの人の為に、あの弟も自分の過去も全部受け入れて生きていこう。









結婚することになりました


(やっと藤真から卒業だ....南さんになれる...)
(そんなに嫌だったん?フジマって....)
(まぁね............私を道端で囲んで健司の居場所を問いただすあの女共に仕返ししてやりたいくらいにはね)
(....やっぱ怒らせるとおっかいなほんまに.....藤真とそっくりや.....見た目綺麗で中身は割と強め.................)






藤真くんはお姉ちゃんの彼氏に花形くんを強く勧めていたらいいなと思いました( ˙-˙ )身内を知り合いで固めて自分の地位を確保する作戦。外部の知らない人間と親戚にならなきゃいけないくらいならって妹の彼氏も自分でどこからか選んできそうだな.......そんな感じだったらいいなぁって思いました( ˙-˙ )






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