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『えぇ?!勉強合宿ですか?』
「そうだ、今日俺の家に来い、手に負えん」
『わっ、わかりました...』
「ちゃんと家の人に伝えてくるんだぞ」
赤木さんと花形さんに呼び出されるなんて私そんなにテスト悪くなかったのに...って思ってたらなんとまぁテスト赤点の奴らのために勉強合宿IN赤木家を決行するとかなんとか。赤木さんと花形さんと私で赤点メンバーを指導するとか...
『宗ちゃんは来ないんですか?』
「神は今日用事で来られないって」
『そうなんですか...』
結局私はまた2位だった。1位はもちろん宗ちゃん。その差は前回よりはだいぶ縮まってたけどやっぱり敵いません。頭良すぎでしょう...なのに今日来ないなんて、私も手に負えないよ...しかもなんてったって、泊まりだからね!!ま、赤木さん家だからあの可愛い晴子ちゃんもいるわけだけど。
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『えぇっ?こんなに赤点が...』
夜7時、赤木さん宅にお邪魔すると既に赤木さん、花形さんに加えて、右から三井さん、大ちゃん、南さん、岸本さん、宮城、沢北、流川、花道、信長、そして彦一...あれ?彦一?
『彦一も?』
「ワイはギリセーフやったんですけど、なぜか呼ばれて...」
「ギリセーフはセーフじゃねぇ」
「赤木さん相変わらず厳しいですわ...」
そんなこと言ったら仙道さんも福さんもギリどころかギリギリでしたよ!なんて騒いでるけど綺麗に無視されてた。かわいそうに彦一...
「さて、始めるぞ」
「藤真も呼んだのにな...アイツ...」
花形さんの独り言が虚しく響いた。あぁ、藤真さん...本当にひどい人だ...
『私は誰に教えればいいでしょうか?』
「俺!俺!絶対俺!」
「いいや、諸星さんじゃなくて俺!」
「いーや、沢北じゃなくて俺!!」
ハァほんっとうにうるさいこの2人...やる気だけはあるみたいでいいけど。そのうち晴子ちゃんが強制的に呼ばれて何故か彩子にも連絡するように言われて、晴子ちゃんが流川と信長と彦一、彩子が宮城と沢北を見て、花道には赤木さんがマンツーマンでついた。別室に連れていかれたし、ウケる。
花形さんはうるさい大ちゃんと三井さん連れてったから残った関西2人組を私が担当することになった。
「赤点なんてほんま勘弁してほしいわ」
『勘弁して欲しいのはこっちですよ』
「なんやなまえ〜はよ教えろや〜」
『教えてますよ、聞いてないだけじゃないですか』
もう本当に岸本さん扱いづらいな。眠くてイライラしてるし髪下ろしてるから前髪邪魔そうだし...
『南さん聞いてます?』
「んあっ、おっ、おん」
「あー南は放って置いてええで、傷心中やねん」
『?なんかあったんですか?』
「好きな女にフラれてん、しかもな目の前で他の男に連れて行かれてん」
『ええっ?!それは大変でしたね...』
「...キーシーモートー!!!」
どかっと席を立って殴りかかろうとしたから必死に止めたら弱いパンチが私の頬に決まった。ふぇっ?!痛いんだけど??
「わっ、悪い!大丈夫か?!?!」
「なにしてるん南のドアホ!なまえ!平気か?」
『痛...ひどいですよ南さん、集中してください』
騒ぎを聞きつけて隣の部屋から光の速さで大ちゃんが出てきて本気で南さんの胸ぐら掴んだから驚いて思わず抱きついてしまった...
『大ちゃんッ!やめてっ!!』
「...(!!!抱きつかれた...)」
なんとかその場は収まったけど...赤木さんが出てきてなぜか私も一緒に説教された。おいおいなぜだ?私はなにもしてない...どころか頬殴られたのよ?
『さて、気を取り直して...』
「俺が見るから、交代しよう」
花形さんの優しい声がかかり私は三井さんと大ちゃん担当になった。ふぅ、正直安心しました。あの2人にはついていけません。もう、南岸本の関西コンビめ!
『三井さんすごいです!全問正解!』
「ヘッ、やる時はやる男、三井だからな」
『やらない時を無くしてください』
「マジで三井ん家の母さん料理うめーんだよ」
『いきなりどうしたの大ちゃん』
そういえばこの間行けなかった。今日は宗ちゃんもいないしゆっくり話せるぞグヘヘ...
「なぜだか俺ん家母さんなまえに会いたがってんだよな」
『嬉しいですよ〜私もお会いしたいですって伝えて下さい』
「わーったよ、今度こそ遊びに来いよ」
うわぁ、嬉しいなぁ...ヤバイなぁ...三井さん母絶対綺麗だよなぁ、寿くん、とか呼びそうじゃない?上品な感じで...いや違う?少しヤンキーチックかなぁ?違うか...
「よし、できた!これで終わりだな」
『わー!頑張ったぁ、すごいです2人とも』
なんだかんだ課題も終わり達成感に満ち溢れながらリビングへ戻るとみんなもゾロゾロ集まってきていた。その後解散となって各自好きなとこで寝るということに...
「なまえさん、私の部屋で寝てください」
『わぁ、ありがとう晴子ちゃん!支度したら行くね!』
晴子ちゃんが声をかけてくれて赤木さんもそこなら安心だと納得してくれた。ありがとう、赤木家。荷物をガサガサ漁って歯磨きに行こうとしたらギャーギャー騒いでる洗面台の様子が見えて行くのを躊躇った。今行っても使えなそうだな...
『そういえば、流川いないけど寝たのかな?』
あれ?あの子どこで寝てるの?ちゃんと歯磨いたのかなあの寝坊助...
隣の部屋をそっと覗くともう既に真っ暗でリビングはうるさいのにスースー静かな寝息と盛り上がった布団が見える。あ、流川かな?
ゆっくり覗きに行くとそこには綺麗な顔して眠っている予想通りの流川がいた。はやっ、もう寝たのか...
生存確認は無事果たせたし、歯ブラシ片手に部屋を出て行こうとしたら不意に優しく右手を掴まれ、驚いたと同時に今度はすごい力で引っ張られた。なんだ最近腕を引っ張られることが多くて肩が外れそう...って、なに?!
『うわっ、!』
案の定引っ張ったのは流川でスースー寝てるはずなのになぜか布団に一緒に入れられたわけである。どういう状況なのこれ...目の前に流川の綺麗な顔が...
『...ど、どうすればいいの...?!』
と、とりあえずここから出ないと、ダメだよ同じ布団で寝るなんてそんな、小学生じゃあるまいし...ゆっくり離れようとするものの掴まれた右手が離れない。寝てるんだよね?力強すぎなんだけど...そのうちガッと反対側の手が私の首に回ってきて完全にホールドされた...ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!
これはヤバイよ!!誰か!!
『どっ、どうしよ...流川、流川?』
起きて、お願い、目の前に私がいるのよ気付いてよ...
『...えっ?!ちょっ...!』
そのうち寝ながらもゴソゴソ動き始めた流川のせいで私と流川の距離はもうほんと数ミリ...ヤバイ、呼吸が全部こっちにかかるんだけど?何?息までいい匂いだぞ流川楓...!ヤバイ触れる触れる...ギャァァ!
『...!!!!』
その瞬間、スローモーションみたいに流川が少し動いてフワッと触れた唇同士...
ヤッバイ、ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!
わ、私の、ファーストキス...
その後すぐ流川は寝返りを打って反対側を向いたからその隙に抜け出して部屋を出た。みんな自分のことで私になんて視線は向いてない。...よかった。
だけど、どうしよう...こんなの、おかしいよ...
頭の中流川と、流川の寝顔と、流川の唇の感触でいっぱいだよ...ーーー
事故です!事故です!絶対事故です!
(ぶるっ、うわぁ、寒気がした...)
(宗一郎、大丈夫?)
(母さん、俺、何か凄い嫌な予感がする...)