陵南





「おい、彼女嫌がってるだろ」
「なんだテメーは?!」

陵南に入学してすぐの頃だったと思う。俺は部活帰りに騒がしい輪の中で1人、嫌そうな顔をする女の子を見つけてすぐに状況を理解した。あぁ、大丈夫かなぁ、怖いだろうに。気付けばその輪の中に入って腕を掴んで離さない男の手を振り払っていたんだ。

当然逆ギレしてくる相手とザワザワ騒ぎ出す周りの仲間達に、自分から飛び込んだもののどうすべきか...と考えていたら隣の女の子はそっと俺に話しかけてきた。


『陵南の...バスケ部?』
「えっ...そうっすけど」
『ありかとうねでも大丈夫だから...』

少し下がっててね、怪我すると大変だから


彼女がそう言う言葉の意味を瞬時に理解することは出来なかったけど、360度囲まれた俺たちは一斉に歩み寄ってきた男たちから逃れられそうになくて...どうしよう?!とにかくこの子だけでも...!焦った俺の心配を彼女は一蹴した。


『卑怯な奴ら...』


なんと一斉に襲いかかってきた奴らを1人残らず倒したのだ。しかも俺が怪我しないようにって俺をかばいながら。あまりの一瞬の出来事に彼女に引っ張られるがままの俺はかなりダサかったと思うけどそれよりもどうしてこんなに強いんだ?俺は久しぶりにこんなにワクワクした。興味がある...この子に。


『ありがとう、助けてくれて』
「い、いや、俺は何も...」
『学校には内緒にしてね、入学したばっかりでさ』

よく見ればそれは自分と同じ学校の制服で。あれ、陵南の生徒...?


「陵南の1年生?」
『そうだよ、仙道くんでしょ?』
「なんだ知ってたのか...」


これからもっと知ることになるよ、お互いね。

ふと笑ってヒラヒラ手を振った彼女の後ろ姿を見えなくなるまで見つめていた。なんだ?なんだったんだ今のは...


**


次の日バスケ部の練習に行った俺は体育館に入った瞬間目を見開いた。あ、あれ...?!


「もしかして、昨日の...」
『こんにちは仙道くん、マネージャーのなまえです』
「えぇ?マネージャー希望だったんだ?」
『昨日はありがとう、これからよろしくね』
「...こちらこそ」


面白い。
仙道はそう思った。こんなに美しく、そして強い女は初めて見た。おもしれぇ。俺を守ってくれたなまえちゃん。なんだこれから長く一緒にいられるんだな。仙道は口角を上げて笑った。



**



「なまえちゃん、ご飯食べて行こうよ」
『いいけど、越野も植草も行こうよ〜』
「ちぇっ、また2人はダメか」


それ以来俺は積極的にアプローチしているもののことごとく振られていた。2人で出掛けたこともなければゆっくり話をする時間もない。何かにつけて越野や植草を呼び俺と2人を回避してくる。なんだよこんなに想ってんのに。駆け引きは嫌いなんだ。


「なぁなまえ、予習んとこ教えてくれね?」
「あぁ!俺も!マジで意味わかんないもん」
『いいけどじゃあ割り勘で奢ってね』


ニコッと微笑めば越野と植草は頬を染めた。無理もないか。こんなに可愛く笑いかけられれば俺なら速攻で押し倒して...あぁいかん、それじゃあ即刻嫌われる。

なまえちゃんと越野と植草は同じクラスなのに俺は違った。なんと悲しいことか。その上彼女は学年1の学力を持つらしい。頭もいいなんて欠点がないなぁ、ますます魅力的だし知りたくなる。なにか弱点があるはずだ。そこを見つけたいんだけど...


ご飯を食べた後、予習の教材を教室に忘れたらしい越野は文句垂れながら取りに行くと言い、植草もそれについていくことになった。突然訪れた絶好のチャンスに俺は身震いがしそうだ。ヤベェ、豹変しねーように...


「しっかり送り届けろよ?」
「わーってるよ、また明日な」


2人と別れると突然の沈黙が俺らを襲う。隣を見れば下を向きながら歩くなまえちゃん。そういえばあの日彼女を助けて以来じゃないか?2人きりで話すなんてことは...。


「なまえちゃん、そんなに俺と2人が嫌か?」
『そ、そうじゃないけど...』


街灯の明かりがポッと照らされた瞬間を俺は見逃さなかった。なんだその顔は...えっ、もしかして、俺の勘違いじゃなければ...照れてる?


「なまえちゃんもしかして、緊張してる?」
『...仙道くん、違うから』
「だって顔が真っ赤で...!」


言いかけた俺に彼女はあからさまに反応して俺の腕をギュッと掴んだ。なっ?!なに?!なんなのこれは...?


『あのね仙道くん、私さ...』
「うん...?」
『避けてるわけじゃないよ仙道くんのこと』
「そうなのか?」
『もうこの際言うけど、いつからか...仙道くんのこと好きになってて...』


それはもう1番欲しい言葉だった。
あんなに強気で喧嘩が強くて俺のこと守ってくれるようななまえちゃんがこんなに恥ずかしそうにしている、ただそれだけで俺の理性は狂ってしまいそうだった。


「本当に?俺、喜んじゃうけどいい?」
『いいよ、バスケしてる姿見て...それから...ッ』
「俺に守らせて?大好きだなまえちゃん」










何度伝えたって全然足りないよ

(あぁ〜今すぐ襲いたい...)
(可愛すぎるだろこれ...)









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