三井





「しかし本当に結婚するとはな」
「確かにな」


しみじみそういう木暮と赤木に隣にいた三井は目の前の2人を見つめた。デレデレした顔の新郎とドレスに包まれ今日はいつにも増して美しい新婦のその姿にため息が出そうだった。

高校を卒業して8年。

(お前ら結婚すんのかよ!?)
(そうなんすよ〜三井さんこれ招待状ね)

ひと月前、本日の新郎宮城から直接手渡された招待状には宮城と彩子の名が並んでいた。風の噂で付き合い始めただなんだ、聞いてはいたがまさかゴールインするなんて聞いていない。驚きを隠せなかった。

(三井さんも早くいい人見つかるといいですね)
(余計なお世話だ)

高校時代よりさらに綺麗になった彩子にそう言われ三井はとても悲しくなった。俺だってできることならそうしたい。でも、俺は未だに...。


『ええっ?今日の為にわざわざ帰国したの?』
「そうっすよなまえさん、実はね俺も...」


少し離れた場所で桜木と楽しそうに話すなまえを見て三井は深くため息をついた。大学時代、そして就職してからもそれなりに誰かと付き合ったり、そんなこともあった。だけれどどれもこれも長続きしない。それどころかその度に気付いてしまう。自分は一体誰に心惹かれているのか。どれもこれも原因はあの女。なまえのせいだと三井は再びため息をついた。



『えっ?!花道結婚するの?!』
「そうなんすよ、ガハハハ」
『しかも、は、晴子と?!』


遠慮気味に桜木が肩に腕を回すと隣にいた晴子はふふと笑った。なんだなんだ?!まさかあいつらも結婚...?!三井は驚きを隠せなかった。


「桜木たちも結婚するのか!おめでとう!」
「ありがとうメガネくんガハハ!」
『晴子ぉ、じゃあアメリカ行っちゃうんだね...』
「そうなのよおなまえさん、そんな顔しないで?」


晴子に慰められなまえは涙目になっていた。おめでとう、寂しい。そんな言葉を繰り返し呟き晴子と花道を困らせている。彩子に加え晴子まで。一気に嫁に行った2人に置いていかれた自分。戸惑っているようだった。

なまえと彩子は富ヶ丘中出身で6年間2人でマネージャーをしてきた大親友である。中学時はそこに流川を加えよく3人で。高校時はクラスが同じであった宮城を加え3人で。流川が入学してからは4人でよくつるんでいるのを三井は見てきた。楽しそうなその姿に嫉妬や羨ましさを隠せずにいたしてっきりなまえは流川と結ばれるのかと思っていたが、2人には先輩後輩以外の感情は無かったようだった。


「なまえさんはどうなんすか?」
『私は1人だよ...結婚かぁ、いいなぁ』
「そういえば仙道はどうなったんだ?」


何容易く聞いてんだ木暮の馬鹿野郎。
三井はイラッとしたが正直気になっていた部分でもあった為自然となまえの口から出る言葉に意識が集中した。

なまえは高校時代、彼氏を作らなかった。それこそ親衛隊がいた流川のように男子生徒からスターのような扱いをされていたわけだが。周りは流川と結ばれるのかとてっきりそう信じていたわけだが実際は違った。

そして陵南のスターであった仙道もまたなまえに心底惚れていた。それはもう信じられないほどに。何度も何度も当たって砕ける仙道を見て三井は敵わないと思っていた。あの仙道がダメなら俺なんてもっと...。


『なんで仙道くんなんですか?何もないですよ』
「あの後付き合ったりしなかったのか?」
『しないですしないです、まぁこの間リーグ戦は観に行きましたけど』


その言葉に三井は頭を打たれた気分になった。
その後も仙道からのアプローチは続きプロに入った今も彼女を想い続けているようだった。とうとう観念したなまえは試合のチケットを受け取り観に行ったようだ。仙道が信じられないほどの活躍を見せた試合の時だと木暮は騒いでいた。なんだよそれマジでムカつく。


「なまえさんはセンドーと結婚すね」
『何言ってんの花道、そんなわけないよ』


前のスクリーンから宮城と彩子の昔の写真たちが思い出として映り、そこには常になまえと流川がいた。三井はなんともいえない気持ちでそれを眺めていた。


**


『三井さんお久しぶりですね』
「おぉなまえ元気だったか」
『はい、三井さんも元気そうで何よりです』


会場から廊下に出たところでなまえと遭遇した三井は本能的に何かを感じていた。もしかしたら今がチャンスかもしれない。もう2度と訪れないチャンスかもしれない...伝えるなら今だ。なんの根拠も自信もないのになぜか三井に戸惑いはなかった。


「仙道と付き合うのか?」
『...わかりませんでも、そろそろ私が折れそうです』

あまりの仙道くんの想いに、答えずにいられない。
なまえがそう呟いた瞬間三井は腕を引いた。あっという間になまえは三井の腕の中に収まった。


「俺んとこに来い」
『...三井さん、どうしたんですか?』
「俺の隣でドレス着させてやる」
『...な、何を言ってるのか...』
「世界一幸せにする、だから...結婚しようぜ」


なまえはコクンと小さく頷いた。
上を見上げればいつか見た見覚えのある自信満々な三井と目があった。


『...遅いですよ、待ちくたびれました』








愛してると囁くと彼女は世界一綺麗に笑った

(三井さんのバカ、大好き!)









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