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「あーヤベッ遅刻する!」
『洋平くんッ!お弁当忘れてるよ!』


スーツ姿の洋平が玄関で靴を履きながら振り向けばバタバタ追いかけてくるなまえと目があった。ありがとう、そう伝えれば頬っぺたにふわっとした感覚。


『いってらっしゃい!頑張ってね』
「なまえも気をつけて行けよ、いってきます」


高校を出て働き始めた洋平と大学生のなまえはなまえの強い希望により同棲を始めていた。なまえの両親も洋平となら安心だとあっさり認めてあっという間に2人暮らしが始まったのだ。


『さてと、布団干してから私も行かないと...』


同棲生活は極めて順調であった。アルバイトをしながらなまえは洋平のために食事を作り家事もこなしていた。退屈や面倒なんて言葉とは縁遠くなまえは毎日楽しく幸せに過ごしていた。大好きな洋平と同じ家にいる。ただいまと自分の元へ帰ってくる。いってきますと自分の作ったお弁当を持っていく。マンションの家賃こそ親が負担してくれるものの食費や生活費は全て洋平が出してくれるのだ。もちろん自分のバイト代も合わせているがまだ学生の身だ。学費にも充てないといけない。


『卒論書かないとなぁ...』


大学四年。卒論。卒業。就活。内定。
よく聞くその言葉にうんざりを通り越し晴れ晴れしい気持ちである。なまえはマンションから通える距離で就職を決めていた。ありがたい。これからも一緒にいられるんだ。


『洋平くん、今日も頑張ってね...!』


靴箱の上に置いてある2人の写真にそう言うと久し振りに大学へと向かった。



**



「改めて、卒業おめでとう」
『ありがとう洋平くん!』


やっと同じ社会人だぁ...そう呟くと大変だぞ?と洋平は先輩ぶった。そんな姿になまえはおかしくなってフフと笑った。

2人でいつものようにテーブルに座ったが目の前にはホールケーキ。”卒業おめでとう”と書かれたそのケーキは仕事帰りに洋平が買ってきてくれたものだった。


『社会人になっても、どうぞよろしくお願いします』


ペコリと頭を下げたら洋平もこちらこそと頭を下げた。相変わらずなまえは洋平を溺愛しており何かあるたびに好きだの大好きだの伝えていたがその時ばかりは真剣であった。これからもずっと一緒にいたい。いつかは家族になりたい。そんな思いがなまえを真剣にさせる。そんな彼女の気持ちを知ってから知らずか洋平は後ろからそっと箱を取り出した。



「なまえ」
『うん?』
「今すぐじゃなくていい、落ち着いたらでいいから」


目の前にそっと差し出すとなまえはビックリした顔をした。


『なに、これ...?』
「俺と結婚してくれませんか」


なまえと家族になりたいです

涙で前が見えなかった。給料を3年間コツコツ貯めていたそうだ。もともと卒業する時にプロポーズをすると決めていたのである。洋平からの大きな愛を知りなまえは誰よりも美しく綺麗に笑った。



















あなたの家族になりたいです

(よろしくお願いします!)
(ありがとう、幸せにします)
(明日出しに行こう?!水戸さんになる!)
(...明日?!)






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