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カーテンの隙間から差し込む光が、悪戯に瞼の裏を刺激する。

燦々と降り注ぐ太陽の光はいっそ迷惑極まりないもので、逃れるようにころりと寝返りを打った先、視界一面に境界線が広がった。
光を浴びて一層眩いばかりに燦爛とした金色は、朝日以上に此の瞳を刺激する。朝と限定してしまえば迷惑な人だ、と其の金髪に手を伸ばして触れると、ふわふわとした柔らかな髪は其のボックス兵器を連想させた。何時も此方を小馬鹿にするような憎たらしい笑みはなく、形の整った唇からは規則正しい寝息が聞こえるだけで。

ほんの、悪戯心。

其の分厚くガードのお堅い前髪の下に手を差し入れ、そっと持ち上げてみると。深い海を連想させる蒼い瞳が、じっと此方を見据えていた。

「ぅ、わっ!?」

驚き、咄嗟に仰け反る。危うくベッドから落ちそうになった所を間一髪、目の前の腕に抱えられて其れは免れた。見上げると、其の瞳は再び前髪に覆われ遮られてしまったが、代わりに先程まで閉ざされていた唇が大きな弧を描き、羅列の良い歯が露わになっている。

何なんだ、此の人は。

「……いつから、起きてたんですかー…」

「ししっ、王子の髪弄くるずっと前から」

知りながら、起きていたというのか。自分はずっとからかわれていたのだと気づけば、僅かな羞恥と悔しさが込み上げた。
反抗するように睨みを効かせると、何時もの独特な笑い声と共に可愛いな、と馬鹿げた台詞が降ってきた。矢張り此の人は、前髪の所為でちゃんと視界が見えていないらしい。睨み付けられて可愛いと感じる人間が何処にいると言うのだろうか。

「生憎、ここにいるけど」

そう言いながら、突然腕の中に閉じ込められたので抵抗を試みる。が、抵抗すればする程、より一層強く抱き締められるという悪循環。次第に骨がみしみしと音を立てるのが今にも聞こえてきそうだったので、仕方なしに力を抜く。ししっ、と満足げな憎らしい笑い声が頭上から降ってきた。

「…せんぱーい……苦しいですー…」

「……ふらんー…」

「…………」

すん、と鼻を啜れば、何時もと同じ彼の香りに包まれるようで、其れに酷く落ち着きを覚える自分がいる。口ではぶつぶつと文句を言いながらも、甘えるように額を相手の胸板に押し付けた。

「……せんぱい」

「…ん?」

「……んー…」

「…………」

甘えるようにせがめば、額や瞼に小さく挨拶を交わされたのちに唇が重なる。ふんわりとした空気が暗殺部隊等という言葉は似つかわしい程で。何度も角度を変えて落とされる、和やかで軽い口づけを受け入れて瞳を閉じた。
が、薄く開いた唇を割って突如差し入れられた其れに、身体が硬直とする。
歯列をなぞり、侵入しようとしてくる其れを拒むように身を引いた所、何時の間にか頬を両手でがっちりと固定されていた為、其れは許されず。這うように口内を荒らされて、先程までのふんわりとした空気の雲行きが怪しくなっていくのを肌で感じた。
回避するように身を捻って、抵抗を示す。すると、重なった唇は其の侭に腕を捕らわれ、後方の寝台へと沈められた。ひやり、と嫌な汗が背筋を伝う。

「…ん…ふぅ…ぁっ」

腰辺りを這う怪しげな掌の動きが、つい此の間の夜を連想させるようなものであったから沸々と鳥肌が立った。
其処で漸く唇が解放され、奪われた酸素を補うように息を吸い込んだ瞬間、薄いシャツを慣れたような手付きで捲り上げられて嫌な予感が確信へと変わる。

「ちょっ、とー…!朝っぱらから何、考えっぁ」

「王子に朝も晩も関係ないし」

何時の間にか馬乗りになっているベルフェゴールの肩を押し返そうとしてみても、其れより先に胸の突起に舌を這わされて力が抜けてしまう。小鳥の囀りが爽やかな朝に、此奴は一体何を考えているんだ。

「だ、め…ですって…せんぱ」

「何がだめなんだよ。お前が誘った癖に」

勝手な解釈をされて、キスなんかせがまなければ良かったと後悔するがもう遅い。一旦此の人に火を付けてしまったら、どう足掻こうと無駄で。

あぁ、もうどうにでもなれ。


**




「…んゃ…っぁあ、ん」

一糸も纏わず重なる身体と、絶え間なく送られる愛撫が酷く熱い。

きつく瞳を閉ざし、枕に片頬を預ける事でぎりぎり耐えている理性も頼りないもので。頭上から絶え間なく落ちてくる荒い吐息も其れを煽る糧にしかならない。
フラン、と不意に声が落とされ、薄らと瞳を開けば前髪越しに視線が交わった。

カーテンは、朝目覚めた時の侭に閉まっていた為、部屋の中は然程明るくはない。其れでも夜が明けた事には変わりないのだから、視界は良好だった。細い癖にしなやかな筋肉の付く身体に、相変わらずの劣等感を覚える。逃避するように視線を外した先で、いっそ凶器ともいえる成長を遂げたベルフェゴール自身を根本まで飲み込んだ己が目に入り、慌てて視線を逸らした。其の様子に目敏く反応した性の悪い自称王子が、独特な笑い声を上げる。

「何、今更恥ずかしがってんの?お前が好きでコレ咥えてる癖に」

「っち、が…っ、ゃあ、んっ…!」

否定の言葉を紡ぐ前に突然揺すられて、拒絶の声は強制的に断ち切られた。律動を繰り返す度に接合部からぐちゅぐちゅと水気を帯びた厭らしい音が響き、自身の耳までを犯す。耳を塞ぎたくても、絡めた指がそうさせてくれない。

「ふぁっ、ぁっ…んゃぁあっ」

「…っ…お、まえ、本当に厭らしいな」

揶揄するように囁かれた言葉を否定したくても、自身の唇は厭らしい音を奏でるばかりで。
膝裏に手を這わされ、其の侭軽く持ち上げられる。両腿を肩に抱えられれば、禊を根本まで強く埋め込まれた。前立腺を押し潰すようにぐりぐりと其処ばかりを中心的に攻め立てられ、熱を感じる自身が憎い。抉るように何度も激しく穿たれて、ぞくぞくと快楽の波が押し寄せる。掻き混ぜるように中を散乱させられれば酷く快哉を感じて、頭の中が真っ白になり、何も考えられなくなった。

「っぁっ…んぁっ、ひ、ぁっ…せん、ぱっ」

「………っ煽んじゃねーよ、馬鹿」

縋り付くように伸ばした両腕を、ベルフェゴールの首に回す。其れに応えて深く食むように口付けをされた。いっその事此の侭溶けて、一つになってしまえばいいのに。
息を詰めるような気配を感じ、ベルフェゴールにも限界が来ているのだと分かる。其れを嬉しいと感じる自分がいて。腰を打ちつけられて形の良い爪先がぴんと立ち、張り詰めた自身が絶頂を迎える為に背中を弓なりに反り返した。

「っぁ…も、もぅ、ひぁ…っ、も、いっちゃ、」

「……ん、オレも」

「っ、ゃぁあぁっ…!」

「……っ、…く…」

最奥を穿たれて、同時に果てた。


**


簡単に処理を済ませた後、二人して寝台に潜り込む。直ぐ様、覆い被さるようにしてベルフェゴールが倒れ込んできた。

「……重いですー…」

「……んー…」

「…堕王子のせいで腰がやられて、今日一日動けませんー…」

「添い寝、してやるから」

そう言って上から退き、布団をかけ直してくれたベルフェゴールの胸に悪態を吐きながら擦り寄れば、柔く腕の中に閉じ込められた。相手の体温と混じって、じんわりと身体が暖かく馴染む。心も日溜まりに当てられたような此の感覚が、好き。

しかし最早日常と化した此の添い寝も、今更ながら危険と隣合わせだという事に気が付いた。そんなフランが添い寝を拒否し、ベルフェゴールに喚かれるのはまた別の話。







**

1111hitキリリク*莉由様へ。

甘々要素、薄かったでしょうか?しかも裏で散々やらかして…更にベルの瞳を勝手に構造してしまって…!(汗)
莉由様がもし、ベルの瞳は赤だとか緑だとかetc.ありましたら遠慮なく申し付けて下さいませ。お目の色訂正させて頂きます。

莉由様のみお持ち帰り、返品化です。
リクエスト有り難うございました!




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