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燦々と太陽が降り注ぐ、穏やかな昼下がり。
目の前に積まれたドルチェの前で、何時もの無表情からは想像もつかないくらいに、翡翠色の瞳をきらきらと瞬かせて其奴は口を開いた。

「これ、全部食べていいんですかー?」

「ん、だってお前の為に買ってきたんだし」

わーい、とまるで子供のような声を上げ、早速手を伸ばすフランをちゃっかり自身の膝上に乗せる。丸い頭を撫でたり柔らかな髪に指を絡ませたり好き勝手弄くってみるが、今はどうやら機嫌が良いのか、将又ドルチェに夢中でオレには構っていられないのか、フランは山積みに積まれた其の数々に夢中だ。
普段は毒を吐いてばかりで可愛げのない恋人からは想像もつかない、幼げな様子に無意識にも口端が緩む。

「フランー」

「…………」

「……フランー」

「…………」

「…………」

オレ自身、甘いものはあまり好かない部類に入るもので、そんな大量の糖分をよく次から次へと摂取出来るものだ、と己の恋人を眺めながら感嘆とした。
最早此方の存在等疾うに忘れてしまったかのように一心不乱になって咀嚼する恋人。胸中に、満たされない何かが着実に募っていくような気がした。
其の様子を黙って見ているのが我慢ならなくなり、オレは唐突にフランの手首を捕らえ、上体ごと無理やり此方に向かせた。反動で手に持っていたタルトがべしゃりと床に落ちて悲惨な事になったが気にせず、抗議の毒が放射される前に其の柔らかな唇を塞いだ。

「なにす、っ…ぅん」

逃れられないように後頭部を片手で固定する。歯列をなぞって口内に舌を差し入れれば、此以上無い位に甘ったるい香りが鼻を掠めた。押し戻すように抵抗する舌を逆に捕らえて絡ませれば、鼻腔を擽るような声がどうにもこうにも欲を唆られる。
流石に息が苦しくなってきたのか、相手が軽く胸板を叩いてきた頃合い。名残惜しそうに唇を離せば、互いの舌から繋がった銀色の糸がぷつりと途絶えた。途端に翡翠の瞳がぎろりと睨み上げてきたが、背丈の関係上、目線は上目遣いと捉えられない事もない。其れ以前に、桃色に上気した頬が精一杯の威嚇を総て台無しにしていて。
其処でどうしようもなく愛しさが込み上げたものだったから、其の侭相手を抱き寄せ拘束する。

「……ちょっ、…とー…」

「可愛いな、フラン」

「っ、ミーは可愛くなっ…」

「よしよし、可愛い可愛い」

「……バカにしてませんー?」

疑わしい視線を向けてくる其奴の前髪を掻き分けて、形の良い額に軽いキスを落とす。途端にほんのりと頬を染める其奴は無自覚なのだろうが、そういう所が余計に危ないと思った。そっと髪を梳いてやれば、悪態をつきながらも寄り添ってくるフランが、酷く愛らしくて。
同じ糖類でもこんな甘さは悪くないな、と其の恋人に気づかれぬように、そっと笑みを浮かべた。






**

777hitキリリク*翆様からのリクエストで甘甘ベルフラ。
お好きなようにと仰って下さったのですが、こんな感じで宜しかったんでしょうか…甘いベルフラは普段あまり書かないのでドキドキです。
翆様のみお持ち帰り、返品可です。
リクエスト有り難うございました!



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