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街沿いの少し外れに建つ、一軒のお洒落な喫茶店。うちの学校で知る生徒は数少ないとっておきのさぼり場所である。毎度の事、四時限が終わった時点で喫茶店に辿り着くまでは誰にも見つからないようにと、細心の注意を払っていた筈なのだが。

先程からカウンターに付く自分を挟むようにして居座り、互いに敬遠しあっている頭にティアラを乗せた痛い人が二名。
同じ顔に挟まれるミーの気持ちにもなって欲しいが、そんな事を言った所で俺様な此の二人に通じる訳もなく。

「…あのー…やっぱりミー、別の席に…」

「ほらみろ、てめーの隣は嫌だってさ。ししっ、そりゃそうだよなゴキブリの隣じゃ」

「んなことフランは言ってねぇだろ。出来損ないの隣に居ると馬鹿が移るから嫌なんだとよ」

「つーか、なんちゃって優等生のお前が何でここにいるわけ?いつもみたいに良い子ちゃんぶって大人しく授業出てろっつーの」

「分かっててみすみす二人きりにさせるかよ、バーカ。こんな失敗作よりオレ様と一緒がいいよな?フラン」

「……あのー、ミーは一人でさぼりに来ただけで、どちらを選ぶ気は…というか何故あんたらがここに…」

「勘違いキッモ、フランはオレの物なんだっての。いい加減諦めろ」

「は?いつからお前の物になったんだよ。勘違いしてんのはてめーだろ、出来損ないのくせに自惚れてんじゃねーよ」

「……あのー、ミーは物じゃ…」

「調子に乗ってんじゃねーよクソ兄貴」

「それこっちの台詞なんだけどクソ弟」

あーだこーだと頭上で飛び交う応酬は、一向に収まる気配がない。此の人達は、何故こうもミーにばかり付きまとうのか。好かれるような事をした覚えも無ければ、寧ろ嫌みを買っても可笑しくないくらい、自分は愛想が悪いと自覚しているくらいで。
其の上、どちらが此処にミーと居るべきかという口論からどうやったらミーがどちらの物かという口論に発展するのだろうか。生憎どちらの所有物にもなる気はさらさらないのだが、其れを訴えた所で人の話を聞くような彼等ではなく。

無言で席を立ち、鞄を取って出口に向かう所で、おい何処に行くんだよフラン、と綺麗に重なり酷似した声が背中にぶつけられた。こういう時ばかり息がぴったりで、示し合わせたようにハモるのは止めて欲しい。頭が痛くなる。

乱暴に店の扉を閉める直前、慌てて自分の鞄を手に取り、互いに罵倒し合いながらばたばたと追い掛けてくる騒がしい足音が二人分。誰でもいいから、此の人達をどうにかしてくれないだろうか。

心情とは裏腹に爽やかな青空を見上げて、溜め息を吐いた。






20111012


秋海棠=片思い
過去拍手お礼文でした。



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