妄想365日



玲央姉とモブの話(小ネタ)

2013/02/16 23:40




「えー?征ちゃん一年なのに主将やらせていいのかって?
私はいいと思うわよ、だってそれが一番勝てるじゃない。
今年は公式戦全勝だし、結果は出してるし、ね?
私は征ちゃんの言うみたいな、勝つのが絶対正しいとかどうとかは考えたことないけれど、勝った方が嬉しいのは一緒だしね。」
「でも、先輩だって『無冠の五将』って言われるくらいだし、オレらよりは全然強いじゃないですか」
「バッカねぇ、無冠の意味わかってる?」
「えっ、と、キセキの世代のせいで……あっ」
「そうよ、私たちは『無冠』なのよ」

キセキの世代、なんてあの五人が言われるようになる前だって、帝光中は全国大会の常連だった。でもそこまで逸脱した強さがあったわけではなくて、優勝校は毎年変わっていて各校の接戦だった。
「帝光の全中二連覇がかかったあの大会、それは私たちにとって中学最後の試合だった」
帝光の二連覇阻止、そして何よりも自分たち三年にとっての特別な夏。
今までよりもやる気もあった、練習も吐くほどした。

「でも、勝てなかった」

あっけなく、それは一瞬のことのように帝光に負けてしまった。

「……」
「その年、ダブルスコアで帝光は全中二連覇したわね。あー今思い出しても腹立つわあ」


つまり、自分たちの代で主要大会のタイトルを取ることは叶わなかった。
全てキセキの世代の才能の前に崩れ落ちてしまった。
だからか、勝利に対する執着心がいっそう強くなった、と感じるのだ。

「中学は公立だとほとんど学校は選べないけど、高校は選べるでしょ?絶対強いところに行ってやるって思ったわ。そんで入学したらあら不思議、同じこと考えている奴はいるもんよねぇ」
「根武谷先輩と葉山先輩ですか」
「ねぇ、あいつらと同じ思考なんてやだわあ」
でもね、と先輩が呟く。
「たまーに、あいつらも同じなんだろうなって思うのよ。だって、悔しいじゃない。勝ちたいじゃない」
「……」
「もう、負けるのはごめんだわ」

そう言ってしばらく、先輩は口を開かなかった。


「――確か東京に、無冠が二人いるわ。どっちが勝ってくるか、楽しみね」
「そうですね、まあ……このチームが負けるとは思えませんが」
「当然ね、夏同様に勝つのはウチよ」

キセキの世代が先頭に立ち、才能ある人材を引っ張ってゆく。
平凡な僕にはわからなかったが、ただこの人たちとは同じ世界に住むことはできないのだろう。それだけは無駄に自信を持って言える。

赤司征十郎が入学してから今の今まで、このチームが負けたことは一度もなかった。

――そして、冬が始まる。



◇◇◇


玲央姉が出てきたあたりに書いた短文。
WC前のモブと玲央姉のお話…。あくまでもわたしのイメージですが!



前へ | 次へ


コメント
前はありません | 次はありません
名前:

コメント:

編集・削除用パス:

管理人だけに表示する


表示された数字:




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -