05
「ふぅぅぅ〜。あやつの相手をしとると寿命が縮まるわい」
ぬらりひょんが汗をぬぐう仕草をすると、今まであった緊迫した空気は消え去った
「じーちゃん!一体あの人って何者なんだよ!」
「雪女も言っておったじゃろ?あやつは"水姫"じゃよ」
「――さっきもチラッと聞いたけど、そのミズキって何なの?」
(一応)妖怪の総大将である祖父に正面からくってかかれるのだからタダモノではないことは十分分かる
「そこの雪女や河童たち水の眷属たちの主ってとこじゃな、アイリは」
「水の眷属の主?…あの人が?」
頭の上にハテナマークが乱舞しているリクオを見てぬらりひょんは肩をおとす
「情けないのぉ…何もしらないとは。雪女、説明してやってくれ」
「ハイ!」
元気よく返事すると雪女はいつのまにか用意していた画用紙をリクオに見せながら説明しだした
「まず先程も少し説明しましたが、アイリ様は"水姫"と呼ばれる人魚です。……ご本人は半魚人だと否定してますが」
人魚(らしき)絵のかかれた画用紙はきっと雪女の手作りなのだろう。
……あまり、上手くはない
「……リクオ様?聞いてます?」
「あ、うん!もちろん!で、続きは!?」
アハハと誤魔化すように笑えば疑った目を向けつつも話を進める雪女
まわりの妖怪たちもフムフムと頷きながら聞いているのを見て、本当はみんなも"水姫"というのを知らないのではないかと疑ってしまうリクオなのであった
「アイリ様は水に関わる妖怪にとってはまさに神と同じ存在です。あの方のためなら命を投げ出せる熱狂的な信者もいる程なんですから!」
人魚(らしき)モノのまわりを信者(らしき)棒人形たちが囲っている絵を指差して力説する雪女
「へーそんなすごい人なんだぁアイリさんって。…ってあれ?そういえばそんなすごい人にじーちゃん嫁になれって言ったんだよね?ってことはアイリさんって実はじーちゃんと同じ年ぐらい…なの?」
若い頃の話だと少し前に言っていたことを思い出して首をひねる
「――…そうじゃのぉ。確かにあやつとわしは同じ時間を生きておった。アイリの姿はあの時から何一つ変わっとらんがの」
「…?」
「いい機会だから皆にも言っておくがの…あやつは今、"水姫"としての力の大部分を―――失っておる」
一瞬言いよどんだが、"失った"と言いきる
「昔無理して力を使ったせいであやつはずっと眠っておってな。そしてやっと目覚めて殴りこんできたというわけじゃ」
求婚を力いっぱい拒否し、それで本気でケンカして眠りについたアイリ
「しばらくはココで共に生活していく予定だから皆もよろしく頼むぞ」
ここで暮らしていくことで、"楽しいこと"や"嬉しいこと"をたくさん経験させてやりたいのだ
昔みたいに、よく笑う…アイリに戻って欲しいのだ
心の中で小さくため息をついたぬらりひょんであった
。
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