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『……、』
そして朱音もまた、そのスクリーンを見ていた
そこに映っているのはカズ1人だけで、対戦相手の姿がない
そこは彼――時の支配者(アイオーン)、左 安良が支配するその空間
"何もない"はずの空間から一方的に攻撃されているカズは傷だらけだ
カズとアイオーンの実力差は絶望的な程ハッキリとしている
いたぶるように、決して決定打は与えない攻撃を見ていれば一目瞭然だ
不安げな表情で、朱音は自身の手を強く握りしめる
――確かに、カズは弱い。彼の足元にも及ばないぐらいに。だけど……
【きっ…消えたぁぁ〜!あのウッスゥイ〜ニット帽まで姿を消してしまったぁ〜ッ!ウスィ〜のにもホドがあんぞゴラァァ!!】
――弱いカズだからこそ、アイオーンに勝てるかもしれない
「"弱ェ奴の天敵は強ェ奴だ……けどな、強ェ奴の天敵も弱ェ奴なんだぜ?」イッキの言葉が脳裏をよぎる
画面の中、カズはキューブ内をかなりのスピードで走り回っている
――自らの血で赤い線を描きながら
『ふぅん……』
アイオーンはそれに気づかず、"消える"タネがどんどん明かされていく
「キューブの怖いところはね、"周り"が全く見えないことなんだ」
スピット・ファイアは、スクリーンから目を離すことなく小さく呟く
「そしてそれは強者ほど、"牙"が長い者ほど見えていない…」
――己がすでに檻に囚われていることに……!
アイオーンがそれに気づいたときにはもう遅かった
彼のいる空間だけが白くなり、カズに居場所を指し示している
"消える"タネは、全反射――つまり、"熱"
。
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