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「絶対に1週間たつ直前にしか来ないと思ってたから思いっきり油断してたわぁ」
「俺だってたまには早く来るっての」
カウンターに座ってカナタさんの横に恐る恐る座る。
周りにいる人たちから物凄く見られている気がして非常に落ち着かない。
しかし2人はもう慣れているのか、全く緊張した様子を見せずに喋っている。
「はい、じゃあ"写真"を見せてちょうだい」
「ほれ」
カナタさんは懐から1枚の写真を取り出し、無造作に机の上に置く。
少しだけ興味が湧いて覗いてみて……3秒後、俺は自分のその好奇心を恨んだ。
「う…っ」
「何だ何だ急に」
「やだーダメよユウくん、吐きそうならトイレ行ってよね?」
カナタさんはあからさまに、アイリスさんは小さく眉をひそめて俺を見てきたけど、俺からすればアンタらの頭の中を開けてみてみたいぐらいだ。
「今回はえらく派手にやったのね〜」
「たまには"紅咲"も使わないと腕が鈍るからな。はしゃいでやったらものの10分程度でそれの出来上がりだ」
写真を見ながら平然と会話をしている2人の気がしれない。この人たちは本当は人間じゃないような気さえしてきた。
日本にいた頃はホラーとかグロい系の映画とか全然大丈夫で、嫌がる柚樹と一緒によく見に行っていたが、この写真1枚のほうがよっぽどグロい。
青や緑や赤といった色とりどりな物体がその写真の中には映し出されていた。
某RPGによく出てくるスライムに若干似ているような気がするが、こちらのはまさに阿鼻叫喚な惨状だ。
真っ二つにされたもの、体の1部分しかないもの等々…勇者は絶対にしない斬られかたをしたなれの果ては、ぶっちゃけ吐きそうになるぐらいキモい。
「変な子ねぇ。これぐらいでビビっちゃってるなんて。もしかしてユウくんってかなりの箱入り坊ちゃん?」
「まぁ箱入り坊主じゃねぇがかなりの世間知らずだな」
この世界から早く帰りたい。何だか今切実にそう思ったのだった。
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