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「別にいいだろ?気分で3つぐらいサバよんだって」
「若く言うならまだしも何で年を増やすんだよ!」
「だから気分だって」
「ちょっとカナタさんにそんな口のきき方していいと思ってるの!?」
「そーいうアンタも俺に対する敬語が取れてるだろ!」
「僕は敬える人にしか敬語は使わないよ!」
ちょっとお茶目に年齢誤魔化しただけなのに、なんでこんなにも騒がれないといけないのだろうか。
赤茶色の髪に少し薄い灰色の目をしてウルと言い合っているユウの姿はもうどこからどう見てもこの世界の住人だ。
俺が貸した服もサイズ的にはピッタリで特にこれといった違和感はない。
これから徐々に増やしていけばいいだろう。
「俺はお前より2つも年上だぞ!?」
「何さ年寄りじみたこと言っちゃって!年上だからといって無暗に敬うことはできないっての」
「テメェ…!」
ウルがここまで懐くとはさすがに思わなかったな。
見た目はあぁだが、ウルは警戒心と人見知りの塊みたいな奴だ。
俺の連れだとはいえ、慣れるのには時間がかかると思っていたが…取越し苦労だったようだ。
俺には常に敬語だがか、こういう素の口調のウルを見ているのも悪くない…
「あ」
「な、なんだよ急に」
「どうかしましたか!?」
それ程大きな声じゃなかったというのに、2人はピタリと言い争い(という名のじゃれあい)を止めてこちらを見てきた。
「いや…報酬もらうの忘れてたと思って」
手の甲を見て思い出した。色々あったがBランクの依頼の完遂の報告と報酬をもらいにギルドに行かなくてはいけないことを。
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