03
「……好き好んで"銀"にする必要はねェだろ。この世界では"銀"は忌嫌われている色なんだ。白い目で見られることになるぞ」
あんなに綺麗な色なのに、何で嫌われているのだろうか?
それにカナタさんは銀髪……
「この世界で銀を持つ奴は大抵"普通"じゃねェ。精神がイカれちまった奴や人を殺してでしか快感を得られない奴、虐げられることでしか生きてる実感が得られない奴……銀は"普通"じゃない証として認められるのも分かるだろ?」
「だってカナタさんはそんなこと、」
「俺だって"異常"だ。ある意味、な」
自嘲するように小さく笑うカナタさん。
俺はカナタさんのどこが"異常"だなんて分からないけど、俺にとってはカナタさんは命の恩人だ。
何だかんだ文句を言われたり面倒くさそうに見られたりもするが、それでもカナタさんは俺を見捨てないでくれている。
契約だって、たぶん別に結ぶ必要なんてなかったんだと思う。適当に口約束で片づければよかったのに、わざわざ自分にもリスクもある"契約"を交わしてくれた。
まるで見捨てたりはしないと、行動で示してくれたみたいであの時は本当に安心できた。
そんなカナタさんの銀が、嫌なもののわけがない。
「俺は銀がいい」
「だから銀は、」
「俺はそんなこと思ってない。カナタさんの銀髪はすごく綺麗だと思う」
普通に考えればかなり恥ずかしいことを言ってるという自覚はあったが、カナタさんの顔が見えないことも手伝って案外あっさりと口から飛び出していった。
さっきカナタさんが挙げていった人たちだって、"銀"を持ってるからそうなったわけじゃないと思う。そういう人たちは例え赤や青でもそういう風になっていたはず。
「……お前、そんなこと街中で言ったら袋叩きにあうからな」
口では憎まれ口をたたいているが、その声がいつもより少しだけ柔らかいことに俺は気づいていた。
目を塞がれてるから分からないが、もしかしたら笑っているのかもしれない。
「――"初級補助魔術、色変。変える色は……銀に近し灰色"」
一瞬カナタさんの手が熱くなったような気がしたけどすぐに治まり、目を塞いでいた手がなくなった。
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