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「……ギルドも随分頭の回る奴を派遣してきたものだな」
ふいに、親方が呆れたように呟いた。
「我々としては腕はそこそこあり、頭はそこそこ悪い奴を期待していたのだが…腕は上々、頭もすこぶる回転する。"ALC"もいい人材を隠し持っていたものだ」
「褒めたって何もでねーぞ」
「称賛ぐらい素直に受け取れ。第一お前があれだけ派手に暴れたおかで、この街の人間はお前を消すことは絶対に無理だと諦めただろうよ」
暴れた…と言われれば確かに暴れた気もする。
あれだけのことをやれる実力があるのだと宣言したようなもので、少なくとも雑魚っちい奴の戦意は喪失させれたらしい。
「混合魔術を使える程の豊富な知識…恐らくはかなりいい家柄の出だろう。それに加え圧倒的な魔力量、天才的なセンス……人の話題に上がらないわけがないのに、この私が何も知らないということを考慮すると……銀のせいで隔離でもされたか?」
「………余計なこと考えるんじゃねェ。俺は、俺だ。こと細かく詮索されるのは大っ嫌いなんだ」
少し頭のイイ奴は大抵詮索をしたがる。大貴族の色子だったのかとか、どこぞの隠し子だとうとか……もうウンザリだ。
昔のことは全部忘れたいぐらい忌々しいモノでしかない。だから誰にも俺の生まれた場所等は話していないし、これからも話す気はない。
―――いや…一人だけ、いたか。俺が何も言わないのにも関わらず、自力で真実に辿りついたヤツが。
だが、アイツの存在も忘れたいと思っていることには変わりはない。
「……まぁいい。それほど興味があった事柄でもない」
あっさりと引き下がり、親方は一つの大きな扉の前で立ち止まった。
後ろを距離をとって歩いていたウルたちも自然とその距離を縮めることになり……近くに駆け寄ってきたウルは俺の後ろに即座に隠れた。
そのあからさますぎる拒絶にユウは笑いをこらえるような仕草をしたが親方は全く表情を動かさない。ウルが自分に対してどんな感情を抱いていようとも全く気にしていないのだろう。
「ここで依頼の詳細な内容を話そう。私の部屋だ」
開けられたドアの中はここのボスらしい豪華な部屋で、高価だと分かる置物や絵画が飾られている。
だがそれらは多すぎるということもなく、絶妙なサジ加減だと感心しながら、すすめられてもいないのに高級なソファに腰をかけた。
「何そんな入口で突っ立ってんだ。お前らも早く座れ」
この言葉に渋々、といった様子でウルとユウも部屋の中に足を踏み入れ、それぞれ俺の両隣へと座った。
その少し後、親方も向いのソファに腰を落とし、淡々と口を開く
「さて、まずはこの街の被害状況から説明しようか」
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