繋いだ手 | ナノ




16





「……で?何でこんなに早ェんだ?」


目は文字を追いつつ何でもないかのように聞いてきた梨沙


『梨砂は聞いたか?』


「何を?」


『朽木のことだよ』


周りには誰もいないにも関わらず小声で会話を続ける


「人間に死神の能力をやったんだろ?…あ、悪ィその方案書取ってくれ」


『ほらよ。んで、俺はその朽木に会ったんだよ』


今日が期限である方案書を渡して簡単に事の顛末を説明する


『だからどうせ朽木を見つけてなくても連れ戻されてたはずだ』


「ふぅーん…何か変な厄介事に巻き込まれたってわけか」


『まぁな』


隊長の印が必要な書類を冬獅郎に渡しに立ち上がる梨沙

書類の山は少しだけ低くなったような気がする

すくなくとも期限が過ぎているものや今日が期限というものは大方片付けれた


『つっかれたー…』


酷使しすぎた目を労るようにゆっくりと閉じて一息つく


「あら月城くん、もう梨砂の終わったの?」


『乱菊さんもお菓子食べてないでやってくださいよ…』


「やってるのに全く減らないのよ〜」


さも不思議そうに言っているが、処理できた書類の少なさを考えれば全くおかしくはない

5分やって30分休んでいたらそりゃ進まないだろう


「手伝ってよ月城くーん」


ねっ?と可愛らしく両手を合わせてお願いしてくる乱菊は後ろにいる人物には残念ながら気づいてない


『…乱菊さん、後ろ後ろ』


ちょんちょんと後ろを指さされて何気無く振り返った乱菊は……そのままピシリと固まった


「てめぇ………」


「た、隊長…!」


「松本───!!さぼらずに自分でやりやがれ──!」


…大きな雷が落ちた


「なんだよ乱菊さん、まだ終わってねぇんかよ」


そこに自慢気に言いながら梨砂がやってきたらもう事態に収集なんかつかなくなる

仕事そっちのけでギャーギャー言い合う2人を見ていた亜柚と冬獅郎は同時にため息をついたのだった






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