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『……?』
周りから悲鳴やら文句やらが聞こえてくる程のスピードでヤガラを飛ばしている最中、前方に気になる人だかりが見えて眉をよせる
それは何か有名な人がいて、とかの騒がしい人だかりではなくて…集まっている人たちの顔色はどこか心配するかのような……そんな暗い感情ばかりである
『ねぇ、ナミあれ……』
「え?人だかり……え……」
ナミがそれに気づいて見た時、アリスもその人だかりの中心地に見えたモノに言葉を失う
「ウソップ!!!」
傷つき、血だらけになって倒れている仲間の姿を見てナミはヤガラから飛び降りて走っていく
あの大事にしていた1億ベリーが入ったケースを置き去りにして
出遅れた形となったアリスはヤガラにここで待っているよう指示を残し、ケースを持って駆け寄る
近くに寄れば寄る程ウソップの状態が酷いものだということが分かり、アリスは眉をよせる
「ウソップ!!しっかしりて!ちょっと……!!大丈夫!?ねえっ!!」
「なァおい、君達もしや海賊か?」
「うるさいわね!!ジロジロ見てんじゃないわよっ!!」
周りを取り囲んでいた野次馬にガンを飛ばし、ナミは傷だらけのウソップの上体を抱き起こす
『酷い怪我……』
どうやら意識はかろうじて保っているようで、荒い呼吸音が痛々しい
「ウソップ!!やったのはフランキー一家なの!?あいつら!?」
「そうだ…おれが弱ェもんで……!…大金……全部…奪られだ………ナミ……みんなに…会わせる顔がねェよ……っ!!」
悔しそうに、瞳に涙を浮かべて必死に喋っているウソップ
「やっとメリーを……直してやれるハズだっだのに……!!ヒック……!みんなに合わせるカオがねェよ!!!……ウヴ!!」
まだ船が修復不可能だということを知らないウソップは申し訳なさと悔しさに声をつまらせる
「面目ねェ…チキショオ………!」
「……!!」
その仲間の姿を見て、ナミは真剣な表情で低く呟く
「平気よ…ウソップ、お金なら!!必ずみんなで取り返すからっ!!!」
『……』
アリスも口には何も出さないものの、助力は惜しまないつもりだ
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