悲しき詩 | ナノ




03:










「―――見つけた、逃がすな!追え!!」


草木が生い茂る深い森

そんな木々の間を走り抜ける、人影が1つ


「ったく…この俺が直々に出向いてるんだ、絶対に逃がすな」


金髪の男は、気だるげながらもその瞳は鋭い

黒い服を纏った彼らが追うのは、たった1人の女


「まさか"あの女"がこんな場所に現れるなんてな…」


「兄貴、俺も行っていい!?」


「あぁ、ただし殺すなよ」


手にしているのは、1枚の写真

少しピンボケ気味ではあるものの、そこに映るのは女の横顔だった


「しかし、まだ"走れる"とはな…数年前足と目をやられたって聞いてたが」


興味深げに呟かれた言葉は、当然女には伝わることはなかった










「はぁ、はぁ…っ!」


後ろから迫りくる"存在"

捕まるわけにはいかなかった

だがもう、時間がない―――逃げ切れない


「ごめ、なさ……っ」


誰に対する謝罪なのか、小さな声で囁かれた言葉

その次の瞬間――――


ボンッ!!


煙が立ち込め、入れ替わったように、似ていないようで似ている人物が現れる

不安定過ぎる体勢で、自然と体は前へ傾く


ガンッ


倒れる際、石に頭を強くぶつけた痛々しい音が響いた後―――"彼女"の意識は暗転した






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