悲しき詩 | ナノ




01:ただいま、と笑う


『ゲート接続……、完了』
                       

彼女はその言葉と同時に、ゆっくりと目の前の扉を開けた


キィィィ…


軽い音とともに目の前に光が入り―――その眩しさに、反射的にツナは目を細めた

だがその光の中に愛結が入っていくのを見て、慌ててその後を追う


「、ここって……!」


目の前に広がったのは、見慣れた光景だった

愛結と出会うまで――当たり前のように、その幸せを享受していた場所

そう、つまり―――


『ツナの学校に繋げさせてもらったんだ。今日は休日だから誰もいないし…』


並盛中のツナの教室に立って、愛結はどうだと言わんばかりに笑みを浮かべた


『ゲートは私が一度でも足を踏み入れたことがある地域じゃなきゃ繋げれないみたいでね…でも突然ツナの家に現れてもおかしいし、って考えたらここしかなかったんだけどね』


方舟の中からクロームたちが続々と現れ、全員この教室に足を踏み入れたのを確認し、愛結は方舟へと向かう


『壊すか……いや壊して後から繋ぐのも大変だし…"鍵"かけとくだけにするか…』


ブツブツと呟いた後、すっと手をのばして言葉を紡ぐ


『ゲート、"施錠"』


その言葉と同時に白いゲートに頑丈そうな鎖が幾重にも巻きつけられ、しばらくすればその姿は見えなくなった


「き、消えた…!?」


「……ない、わね…」


方舟があった場所に手をのばし、本当に何もなくなっているのを確認して不思議そうにクロームが呟く


『ふふ、鍵をかけたのよ。誰にも開けられないように…扉そのものを隠されては鍵があっても意味はないでしょ?』


「確かに…」


『こちらからはいつでも接続可能だから問題ないわ。ま、あまり利用することはなさそうだけどね』


簡単そうに、何てことないかのように笑っている愛結

何故出来るのかと聞いてみれば、"何となく"という言葉が返ってきた

当たり前のように知っているから、何故だと言われても答えられないらしい

そこに自分の知らない"彼女"がいるという事実を突き付けられたみたいで、ツナはほんの少しだけ……胸が、苦しくなった






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