「「んだよ。ロボならラクチンだぜ!」」

先ほどまでの焦りなんてなんのその芦戸と上鳴は清々しいまでの笑顔だった。

「おまえらは対人だと個性の調整大変そうだからな…」

酸と放電だと確かに強すぎると危害を加えてしまい、対人だと2人はよく調節に苦労しているのである。
機械なら調整を考えずに、自由に出せるため、あとは勉強を教えてもらえば林間合宿は行けたも同然と歓喜していた。

「人でもロボでもぶっ飛ばすのは同じだろ。何がラクチンだ。アホが」

喜びに水を差され、上鳴は当然声の声をあげた。
しかし、忘れてはいけない。爆豪勝己は1言い返したら100言い返す男なのだと。

「うるせえな。調整なんか勝手にできるもんだろ。アホだろ!なあ!?デク!」

急に話を振られた緑谷は、ビクッと肩を震わせた。

「個性の使い方…ちょっとわかって来たか知らねえけどよ、てめぇはつくづく俺の神経を逆なでするな」

あの時のかと凛は、爆豪の言葉ですぐにピンと来た。
爆豪が言っているのは、この間の救助レースのことである。
彼の動きが、まるで爆豪の動きに似ていたのが彼のカンに余計に触ったのだ。

「体育祭みてえなハンパな結果はいらねえ…!次の期末なら個人成績で否が応にも優劣つく…!完膚なきまでに差ァつけて、てめぇぶち殺してやる!轟ィ…!てめぇもなァ!!」

爆豪はそう言い残し、ドアを壊れそうな勢いで開け教室を出て行った。

「…久々にガチなバクゴーだ」
「焦燥…?あるいは憎悪…」

彼の勢いに教室には微妙な空気感だけが残された。

凛の目からは爆豪が焦っているように見えていた。
緑谷の存在にだ。
力もセンスもあるのに、なぜそこまで焦るのか。周りは切磋琢磨としていく対象として、あくまで自分と向き合いで鍛えていけばいいのにと思ったが、彼の性分や緑谷との昔からの複雑な思いがあるのだろう。

「男って複雑だな」

凛は誰にも聞こえないような大きさで呟いた。

さすが濃いキャラが多いA組。
教室はすぐに元の明るさを取り戻していた。
八百万の席の近くでは、週末の彼女の家での勉強会の計画が立てられていた。
凛もわからないところあったら聞きたいと思い、その勉強会に参加させてもらおうと声をかけに行こうたしたが、パシッと引き止めるように凛の腕が掴まれた。
振り返ると、そこにいたのは轟だった。

「どうしたんだ?」

「今週末勉強すんのか?」

轟の質問に、来週すぐに期末があるんだから当然と凛はすぐに首を縦に振った。

「ああ。ちょっと数学でわからないとこがあって、今百に勉強会に参加していいか聞こうと思ってたんだが」

「わからねえとこってどこだ」

なぜそんな当たり前のことをと疑問を抱く凛に轟が間髪入れずに尋ねてきた。
ますます不思議に思いながらも、特に隠す理由もないので数学の教科書を取り出し、問題のページを見せた。

「俺はわかる」

「えっと…ああ…そうか」

突然の、自分はその問題は解ける宣言に凛は相槌をうつことしかできなかった。
彼がどんな反応を求めているのかよくわからなかった。

「俺はわかる」

もう1回同じことを言われ凛は困ったが、少し前に轟が言った『今週末』という言葉を思い出した。もしかして…

「轟が一緒に今週末教えてくれるのか?」

コクッと1回轟は頷いた。
わかりづらすぎる。
それなのに、まるでさっきからそう言ってましたとでも言わんばかりの顔で頷くので、凛は思わず笑ってしまった。
一通り、笑い終わった後呼吸を整えて、凛は轟をまっすぐに見た。

「ああ。よろしく頼む」

轟はいつもなら勉強は、1人でする派だった。
しかし、凛が八百万たちのいる方を見ているのに気がついた。
その時、クラスの誰よりも1番に一緒にいたいと強く思い、彼は気がついたら彼女の腕をとっていた。

轟自身もこんなことは初めてで、うまく言葉が出てこなかったが、誘うことに成功して嬉しくなり、頬を緩めた。
今週末が待ち遠しかった。

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