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「婦警さーん!」
凛は自分のことだと思い、振り返った。そこには、男のような、女のような…いわゆるオカマが立っていた。
「いかがされました?」
凛が尋ねると、オカマは自身のお腹あたりに手をかざした。
「これぐらいの背の男の子見てないかい?息子なんだけど、そろそろ学校から帰って来ても良い時間帯なのに、全然帰ってこないのよ。」
凛は自身の記憶を辿ったが、それらしき人物は思い当たらなかった。
「見てませんね。よかったら、一緒に探しましょうか?」
「いいのかい?それじゃあお願いしようかね。」
凛の提案に、オカマは感謝し、優しく微笑んだ。自己紹介をすると、オカマの名前が西郷特盛とわかった。どこかで聞いたことあるようなと凛が考えていると、男の子が2人凛たちの方にかけてきた。
彼ら曰く、西郷さんの息子のてる彦が、彼らが提案子供達の間で流行っている度胸試しで空き家に入ったっきり戻ってこないのだと言う。しかも、その後を追ったオカマ2人も戻ってこないらしい。
そのことにただ事じゃないと悟った凛たちは少年たちの案内のもと現場に向かった。
―――
「僕は強いんだ!絶対逃げない!」
「この声は、てる彦…!」
てる彦の声が聞こえて、凛たちはその方向に走った。彼女たちが駆けつけると、天使と悪魔が共存したモンスターにてる彦が襲われており、オカマ2人が地面に埋まりながら、助けているところだった。
「僕は強いだって?」
「「知ってるよ。ンなことは。」」
「おめーもおめーの父ちゃんも十分魂の強ェ男だ。誰も見てくれねーってバカ言うな。見えてる奴には見えてるよ。ンなもん。」
「少なくともここに2人だけいることは覚えとけ。」
「素敵な息子さんですね。」
「ふっ、生意気言いやがって」
オカマ2人と凛の言葉に、西郷は口角を上げて、褌一丁になった。
その後は西郷の1人無双状態だった。
凛はその間にてる彦と、オカマたちのそばに駆け寄った。
「はっ!思い出したぞ。天人襲来の折、白褌一丁で敵の戦艦に乗り込み、白い褌が敵の血で真っ赤に染まるまで暴れ回った伝説の男。鬼神 西郷特盛!俺たちの大先輩にあたる人だ…」
オカマの1人の言葉に、通りで聞いたことあるわけだと凛は納得した。
「か、母ちゃん。ごめん。」
「馬鹿野郎ォ。今は父ちゃんと呼べ。」
てる彦は西郷に駆け寄って謝ったが、西郷のげんこつによって気を失い、彼はてる彦を担いだ。
「おい、てめーらはクビだ。いつまでたっても踊りは覚えねーし、ろくに役に立たねー。今度あたしらを化け物なんて言ったら承知しねーからな。それから、なんかあったらいつでも店に遊びに来な。たっぷりサービスするわよ。凛ちゃんもね」
西郷はそう言うと最後にはハート付きのウィンクをした。
「はい!ぜひ遊びに行かせていただきます。」
凛は微笑み、彼の後ろ姿を見送った。
彼女はそのまま、地面に埋まっているオカマ2人の近くにしゃがみながら首をかしげた。
「ねぇ、2人はいつからお姉ちゃんになったの?」
オカマ2人、銀時と桂は凛から無言で目をそらした。
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