「え〜じゃあ酔いも回ってきたし、そろそろォ将軍様ゲームおっぱじめるよォ!」

将軍様ゲームとは要するに、王様ゲームである。

松平のかけがえのもと、こうして将軍様ゲームが始まった。

「よォし、じゃあ始めるぞ。ほら、早いもん勝ちでクジ引き抜…」

「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」」」」

「おじ様ぁぁぁぁぁあ?!」

凛を抜いたお妙、神楽、九兵衛、猿飛は進行役の松平をぶっ飛ばし、客を楽しませるより、我先にと己の欲望のまま本気で将軍様ゲームに取り組んでいた。

「だが、ぱち恵これはチャンスだ。将軍様に将軍様になってもらって、ゲームを思う存分楽しんで貰えば」

「わかってますよ、パー子さん」

新八は銀時の言葉に頷き、床に散らばったクジを集め始めた。

「あーあ。待ってください。もう、クジがめちゃくちゃ。しょうがないな!もう私がクジを持つから、みんなせーので来てください。せーのォォ!」

新八は将軍に将軍クジを引かせようと分かりやすく一本飛び出させて、彼の目の前に差し出した。

だが、女性陣は黙っているはずもなく、新八の手から将軍より先にクジを引き抜いた。

「なにィィィ!?」

新八は急いで将軍クジの行方を探した。
見事引いたのは、銀時だった。

「えーっと、じゃあ4番引いた人 下着になってもらえます?」

上手い!これなら将軍様を視覚的に楽しませることができる!さすが銀ちゃん!

凛が心の中で喜んでいると、それをあっさり裏切るように下着姿になったのは、なんと将軍だった。

将軍かよぉぉぉぉお!!

銀時、新八、凛の心が一致した瞬間だった。

「やべーよ。何で4番引いたんだよ、あのバカ殿。やべーよ、あれ怒ってるよ絶対。勘弁してくれよ、悪気はなかったんだよ。」

「しかもよりによって、もっさりブリーフの日に当たっちゃったわよ?!恥の上塗りだわ!」

「将軍家は代々もっさりブリーフ派だ」

「まずいわ。聞こえてたわ。しかも毎日もっさりブリーフライフなの?!」

凛は聞こえてないと思って言った自身の言葉がまさか聞こえてるとは思わず、もう明日から江戸の町歩かないかも…と心の中で涙を流した。

とにかくパンツ姿から元に戻さなければと、凛たちが考えていると、女性陣たちが勝手に二回戦を始めていた。

「やったぁぁぁ!私が将軍よ!」

将軍になったのはお妙だった。

「うーんと、どうしようかな〜。じゃあ私は、3番の人がこの場で1番寒そうな人に着物を貸してあげる」

お妙はそう言い、凛たちに目配せした。

姉上ェ!さすがです!なんやかんやでお客様のことを1番に考えてたんですね!プロだよ!あんたこそプロォ!

新八が涙を流しながら、歓喜していると、そこにいたのは猿飛の頭に自身のブリーフを被せ、全裸になった将軍だった。

将軍かよぉぉぉぉお!!

「やべーよ。モザイクだよ。将軍、あっちの方は将軍じゃねーよ。足軽だよォ」

「将軍家は代々あっちの方は足軽だ」

銀時の聞こえてないと思って言った言葉は、ばっちりと将軍の耳に届いていた。

「やべーよォォ。聞こえてたよォォ。もう確実に打首獄門だよー!」

打ち首…と凛が現実になりそうな最悪の事態に冷や汗が止まらなかった。

「新八、凛。着物云々は諦めよう。見た通り失うもんは何もねぇ。これ以下はねーんだ。あとは上がってくだけだ!」

「ちょっと、これ臭いから脱いでいいかしら?」

猿飛は将軍のブリーフを本当に嫌そうな顔で脱いだ

「下あったわよ」

将軍の目には涙が浮かんでいた。

「ちょっと、涙目になってますよ、将軍。泣いてるよね?泣いてるんだよね?あれ。」

「オイオイオイオイ、やべーよ。もうなんかただのイジメみたいになってきてんじゃねーかよ。クラスにいたよ?こんな泣き方するやつ!」

凛たちが頭を抱えていると、女性陣たちは既に三回戦を始めていた。

将軍クジを引いたのは、猿飛だった。

「ついに私の時代が来たわ。私の願いは1つ!銀さんと…」

ドゴォ!!!

「番号を言えぇぇぇ!!ボケェェ!!」

ルールをガン無視する猿飛に、お妙は飛び蹴りをきめた。

「トランクスを、5番の人はトランクスを買って来なさい。」

さっちゃんさん…あんたまさか…将軍のために…

気を取り直して、猿飛が言った命令に新八が感激していると、将軍は全裸でトランクスを買いに外に出た。

やっぱ、将軍かよぉぉぉぉお!!

ガチャ

「上様ぁぁぁぁ?!何をされているのですか?!そんな格好で?!」

近藤が驚くのも無理はない。なぜなら、全裸の将軍がそこに立っていたのだから。

しかし、命令が継続中の将軍は驚く真選組を置いて全裸で走って行ってしまった。

呆然とする真選組より先に、後からやって来た銀時たちが急いで彼の後を追っていった。

当然怒って追いかけてくる真選組の気配を感じ、さらに怒って自分の名前を呼ぶ声も聞きながら、凛は、あ、切腹でもなく打ち首かなと遠い目をした。

「早く引くアル!」

神楽が差し出した割り箸の束を将軍は見つめ、引き抜いた。そこに書いてあった文字に彼は驚愕した。『将軍』だったのだ。

「将軍様ァ!我らになんなりとご命令を!」

そう言った神楽の手の割り箸は全て将軍の文字が書かれており、彼らの意図を察した将軍は凛と九兵衛に下着を買わせに行かせ、他の皆を真選組の足止めにと、命令した。


―――


「上様、お下着の方をお持ちしました。…あの、いろいろ失礼なことを…」

謝る九兵衛に将軍は清々しい顔で答えた。その彼の表情から器の大きさが伺えた。

「いいんだ。楽しかったよ。また片栗粉に連れて来てもらうぞ。その時はまた余と遊んで…」

その時、最悪の出来事が起こってしまった。
下着を渡した時に、九兵衛と手が触れてしまったのだ。男性に触れるのが苦手な九兵衛は、触れられると相手の男性を投げ飛ばしてしまう癖があった。

「うわぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

将軍は川に落ちていった。

「将軍様ぁぁぁぁぁぁあ!!」

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