1月9日
風邪をひいた。
「名前ー」
部屋に虚しく響く自分の声に、そうだ名前は泊まりの任務に行ったんだと気付く。
喉の痛み、高熱、咳が止まらない。
これは、里での流行病かもしれないね。幸いにも、任務は入っていない。
先日、綱手様に頂いた薬を飲んで眠っていよう。ガンガンと痛む頭を押さえながら、薬箱に辿り着いて薬を取るとキッチンで蛇口から水を出して飲み込んだ。
やっとの思いでベッドに寝転んで、そのまま意識を手放した。
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ふと、頭がひんやりとした心地よさに包まれて目を覚ます。
「……おはよ」
「……名前?」
大丈夫?と優しい声が降ってきて、俺は首を横に振った。その声の主は、困ったように息を漏らし、俺の汗を優しく拭う。
「任務は?」
「予定より長期になりそうだからって、交代が来たの」
「そう……」
「何か食べた?お腹空いてない?」
「うーん……名前が食べたい」
本当におバカさんね、と言ってキスをしてくれるから、やっぱり名前もおバカさんなんだと思う。
「お粥なら食べられる?」
「厳しいな……」
「ゼリー持ってくるから、少し待っててね」
名前がゼリーを持ってくるのを待つのも叶わず、俺の目蓋は再び落ちだす。
おいおい、ちょっと待ってくれよ。名前からのあーんをお預けにされてたまるもんか。
抗う気持ちとは裏腹に、完全に目蓋は閉じられて、意識もあと少しで手放しそうになる。
「カカシ?」
微かに俺の鼓膜を震わせる愛しい声は、クスリと笑った。違う、起きてるんだよ。名前からのあーんを甘える気満々なのに!
「また後で、あーんしてあげるからね」
ゆっくりと寝なさいね、耳元にそう聞こえて、安心しながら意識を手放す俺は相当にバカなんだなと思う。
そして、抗うことなく意識の糸を手放した。
1月9日 end.
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