8月9日





「名前ねえちゃーん!」
「名前さーん!」
「…………」

任務に向かっている所に賑やかな声がした。
振り返れば可愛い敵襲に遭う。ナルトとサクラと、それからサスケ。上忍仲間のカカシが最近受け持った下忍達だ。ちょっと前にたまたま任務帰り一緒になって、紹介された。それからは里で私を見掛ける度に声を掛けてくれるようになった可愛い子達。

サスケは後ろにいたけど、ナルトとサクラは太陽みたいな笑顔で私に抱き着く。ぎゅうーと隙間が無くなるくらいに抱き付いてきてくれて、何なの可愛いなあ。

「ほら!サスケも!」
「サスケくん!」
「俺は良い……」

呆れた顔をしたサスケにナルトはニヤリとする。

「サスケ、お前ってば名前姉ちゃんが美人だから恥ずかしいんだろ」
「ち、ちが!」
「恥ずかしがってるサスケくんも可愛くて素敵!」

ふたりに煽られてサスケも嫌々私に抱き付いてくれた。可愛くて可愛くて、この子達の担当上忍が羨ましい。

「みんなありがとう。でも、どうして皆で抱き付いてくれたの?」
「今日はハグの日なんだってばよ!」
「ハグの日?」
「8月9日、89でハグだから」
「……くだらねぇ」

なるほどね、それにしてもだからって抱き付いてくれるなんて可愛いなあ。ついつい私も皆を抱き締め返してしまう。

「カカシにはハグしたの?さっきまで任務で一緒だったんでしょう?」
「それが、しようとしたら逃げられたんだってばよ」
「先生って飄々としてるのに、妙にそう言うとこは敏感なのよね」
「何それ、勿体無い!」

じゃあ、その分私がぎゅうしてあげるね。そう言って、また腕に力を入れればナルト達も抱きしめ返してくれた。

「ずっとこうしてたいんだけど、任務だから行かなきゃ」

名残惜しむように離れた私は、ナルト達にもう一度ひとりずつハグをしてからその場を離れた。



「カカシ、お待たせー」

集合場所でエロ本を読みながらカカシが待っていた。チラリと私の方を見ながらも、本は開いたまま。
私は駆け寄り、カカシに半ば飛びつくように抱き付いた。広い背中に腕を回す私の頭を、カカシは顔色ひとつ変えずにポンポンと叩いた。

「何してんのよ」
「今日はハグの日だって、ナルト達が。先生に逃げられたって言ってたから間接ハグ」
「あー、あいつら名前にもしたのか」
「七班の子達って可愛いよね、食べちゃいたい」
「名前が言うと冗談に聞こえない。俺の大事な教え子食べるなよ」
「カカシに言われたくないわ」

私は顎でカカシの胸をグリグリとする。

「私のこと、食べたくせに。もう食べさせてあげない」

やっとカカシは、やっとエロ本を閉じてポーチにしまう。呆れたように、大袈裟にハァと溜息なんかついて笑ってしまう。

「こうして欲しいんでしょ」
「うん!」

カカシの腕が私の体をぎゅうと抱き締める。やっぱりナルト達よりも力が強くて、息が少し苦しくなる。面倒臭がるフリして、本当は優しいこと私は知ってる。
カカシはマスクで覆った唇で、私の耳に触れる。

「ね、名前のこと、これからも食べていいでしょ?我慢なんて無理」

カカシの唇で、耳たぶを挟まれて思わず笑ってしまう。私が本気じゃないこと知ってるくせに。

「もう、仕方ないなあ」

任務に向かう雰囲気なんか全然なくて、三代目に見られたら怒られちゃうかもね、なんて他人事みたいに考えていた。

「じゃあ、任務さっさと終わらせるか。今夜はハグで済ませないから」
「もう……りょーかい」






8月9日 end.

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