3月25日



俺達の出会いは唐突だった。

知り合いの上忍の男と腕を組んだ可愛い女の子、それが名前、君だった。
その男は俺の何倍も良い奴だし、好青年と言う言葉がよく似合う男前だった。その隣で頬を桃色に染めて笑う君は、本当にお似合いで。

ひと目見た瞬間に、俺は君に出会うタイミングが悪過ぎたと思った。

もし、君に恋人がいなければ、こんなやるせない思いをせずに済んだだろう。例え玉砕してしまったとしても、玉砕出来るだけマシな気がした。
恋人の前にいる時が、どんな時よりも可愛くて、俺に君を可愛くしてあげる力がないことを何度も悔しく思った。でも、君が幸せなら俺の苦しみなんてちっぽけなもので、君が今日も笑っている、それだけで、あぁ、今日も良い日だと思えるんだよ。

それなのに、あいつは行ってしまった。

君を置いて、勝手に無茶しやがって。里にあいつの体は、全て戻っては来なかった。それぐらいに酷い戦闘だったらしい。
君は前みたいに笑わなくなって、話し掛けても無理した笑顔しか見せてくれない。

俺は物凄く腹がたった。
名前を置いて行ったあいつに、名前の力になれない自分に。

ねぇ、俺は君のことが誰よりも大切だから、俺に守らせてくれないかな?
俺じゃなくて、あいつの代わりだと思ってくれたって良い。

好きな色はなに?
好きな食べ物は?
何をしている時が一番幸せなの?
どうすれば、君に空いた穴を埋められる?

君の救いになるのなら、全部教えてよ。

それから、俺のことも、名前以外も知ってくれないかな。

俺のこの自己中心的なお願いは、君のことを傷付けてしまわないか凄く不安だよ。





3月25日 end.

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