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寝ぼけているクミと、クザンもサニー号へと向かった。
ふっきれた、そんな笑みを浮かべたクザンは、なにかを取り出してちびナミに渡した。

「永久指針(エターナルポース)……!!」

ちびナミは驚いた。
『PIRIODO』ピリオ島の記録指針(ログポース)だった。

「Zが狙う、最後の"エンドポイント"がある島は、そこだ」

ピリオ島。この戦いに終止符を打つ島。

「なぜ、私達に?」
「なぜ?それがないとZに追いつけないでしょ」
「それは、そうだけど」
「海軍も、最後の島に向かっているはずだ。"エンドポイント"をふたつまで噴き飛ばされて、本気を出してくる」

大将・黄猿以下、中将の多くが出陣するはずだ。
クミの電伝虫にもさきほど、緊急収集の連絡がきていた。
もし、ルフィ達がZに三度、敗北すれば"新世界"ごと全滅するだろう。

「Zに勝てたとしても、海軍の最高戦力に囲まれて、やはり全滅。どちらにしても、おれは最後まで見届けさせてもらうぜ」

ひとりの男と、彼をめぐる戦いを見届ける。
それが、多くのものを失ったクザンに残された願いだった。

「クミ、」

ルフィが真剣な表情でクミを呼んだ。
クミは自転車に跨っているクザンを見る。
クザンは行って来い、とでも言うように小さく頷いた。

「ルフィ!」

クミは思いっきり抱きついたが、ルフィは軽々と受け止めた。

「絶対、死なないでね。私を…、もう置いて行かないでね。」

2年前にエースが亡くなった時、クミは壊れるほど泣いた。
ルフィまで失ってしまうと、クミはどうなるかわからない。

「死なねェよ。おれは強くなったんだ。クミのために、仲間のために。」
「ルフィ…、」

強く、強く抱きしめ合う。
今度はいつ会えるのかはわからない。
数分後かもしれないし、数年後、数十年後かもしれない。

「ルフィ、大好きだよ」
「おれも、大好きだ」

クミはルフィの首に腕をまわし、お互いを求めるようにキスをした。

「ルフィ、またね!」

溢れそうになる涙を抑え、クミはクザンの後ろに跨った。
クザンは海面を凍らせて作った道を、自転車で漕いで行った。
そのクミの後ろ姿を切ない目で、ルフィは見送った。







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