048
寝ぼけているクミと、クザンもサニー号へと向かった。 ふっきれた、そんな笑みを浮かべたクザンは、なにかを取り出してちびナミに渡した。
「永久指針(エターナルポース)……!!」
ちびナミは驚いた。 『PIRIODO』ピリオ島の記録指針(ログポース)だった。
「Zが狙う、最後の"エンドポイント"がある島は、そこだ」
ピリオ島。この戦いに終止符を打つ島。
「なぜ、私達に?」 「なぜ?それがないとZに追いつけないでしょ」 「それは、そうだけど」 「海軍も、最後の島に向かっているはずだ。"エンドポイント"をふたつまで噴き飛ばされて、本気を出してくる」
大将・黄猿以下、中将の多くが出陣するはずだ。 クミの電伝虫にもさきほど、緊急収集の連絡がきていた。 もし、ルフィ達がZに三度、敗北すれば"新世界"ごと全滅するだろう。
「Zに勝てたとしても、海軍の最高戦力に囲まれて、やはり全滅。どちらにしても、おれは最後まで見届けさせてもらうぜ」
ひとりの男と、彼をめぐる戦いを見届ける。 それが、多くのものを失ったクザンに残された願いだった。
「クミ、」
ルフィが真剣な表情でクミを呼んだ。 クミは自転車に跨っているクザンを見る。 クザンは行って来い、とでも言うように小さく頷いた。
「ルフィ!」
クミは思いっきり抱きついたが、ルフィは軽々と受け止めた。
「絶対、死なないでね。私を…、もう置いて行かないでね。」
2年前にエースが亡くなった時、クミは壊れるほど泣いた。 ルフィまで失ってしまうと、クミはどうなるかわからない。
「死なねェよ。おれは強くなったんだ。クミのために、仲間のために。」 「ルフィ…、」
強く、強く抱きしめ合う。 今度はいつ会えるのかはわからない。 数分後かもしれないし、数年後、数十年後かもしれない。
「ルフィ、大好きだよ」 「おれも、大好きだ」
クミはルフィの首に腕をまわし、お互いを求めるようにキスをした。
「ルフィ、またね!」
溢れそうになる涙を抑え、クミはクザンの後ろに跨った。 クザンは海面を凍らせて作った道を、自転車で漕いで行った。 そのクミの後ろ姿を切ない目で、ルフィは見送った。
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