過去編


2022/04/29でこのサイトが10周年を迎えました。
途中サボりまくりで、きちんと運営はしていませんでしたが、それでも頭の片隅にはこのサイトがありました。
10周年ですが、ルフィの10年前の話を書きます。
これは本編で2014年に書いていたものを全て書き直しました。読んでくださってた方は変わったところが多いので、懐かしみながら読んでみてください。


注意!!
名前変換は番外編用になります!!

それではどうぞ。



***_______







ーーーールフィとの出会いは最低、最悪だった。


「お母さん。わたし、お散歩したい。」

母に作ってもらったくまのぬいぐるみを片手に、フミは俯き気味に言ってみた。フミの母は快く頷き、6歳になる娘の小さなその手を握る。
海の近くまで行こうか、と考えながら自分に必死に歩幅を合わせようとする愛娘を見つめた。

「友達できた?」

母の手をぎゅうっと弱い力を込めて握りながら、フミは首を横に振る。人見知りの娘が友人と呼べる子供たちと遊んでいるのを見たことがないからだ。

「まだ……」

「フミの好きな子と友達になりなさい?」

「うん!」

ここフーシャ村では、貴族の子供が来ることもない。平和な村なので、フミが選んだ相手と友達になってほしかった。

「いつか、素敵な人と出会えるといいわね。」

「すて、きな人?」

「フミが心から好きと想える人のことよ。」

「できるといいなー。」

「できるわよ。あなたが笑顔をみせていればね?」

「うん!!」

海辺の近くにある酒場が近づいてきた。酒場「PARTYS BAR」の女店主マキノの親友がフミの母である。
酒場に入るのはフミ自身、まだ数回程度だった。

「フミちゃん、久しぶりね!また可愛くなってー」

「………お久しぶりです。」

母の足に捕まりながら、フミは頭を下げた。マキノは可愛い姿に頬が緩む。

「おい、お前誰だ?」

後ろから声がして、振り返るとそこにはフミと同じくらいの歳の男の子がいた。黒髪で寝癖は直されていない。不審そうにフミを見つめている。
急な出来事に驚いて、フミは母の足にしがみついたまま顔を逸らした。

「こら、ルフィ。驚かさないの。」

「お前、なにしてんだ?」

「…………やだぁ。」

「フミ、ルフィくんよ。」

「なに泣いてんだよ。おれ泣き虫嫌いだ。」

知らない人に嫌いだと言われ、フミの瞳からポロポロと涙が落ちた。歳が近い子供と話すこと自体、フミは初めてだった。
この出来事をきっかけに、フミは酒場に行ってもルフィを避け続けた。
嫌いと言ったのはルフィだったが、フミが来るたびに話しかけ続けた。友達が欲しかったのだ。

「フミ、遊ぼう!」

フミは激しく首を横に振って、くまのぬいぐるみを抱きしめる。フミは酒場のカウンター席に座らせてもらい、縫い物を始めた。
するとルフィはフミの隣に腰掛け、その横顔をじっと見つめる。その目線から逃れるように、フミは縫い物をする手を進めた。
フミが縫い物を始めたキッカケは母だ。くまのぬいぐるみを貰って以来、自分もぬいぐるみを作るのだと意気込んでいる。

「フミ!お前すげェな!!!」

ちょうど出来上がった赤色の巾着袋をみて、ルフィは目をキラキラと輝かせていた。やっとできた、はじめての自分の作品。けれど、こんなに輝いた目ですごいと言われたのはフミは初めてだった。

「…………あげる。」

「い、いいのか!?やった!!!」

ルフィはうれしそうにその巾着袋を見つめては、優しく撫でていた。こんなに喜んでくれるなんて、フミは知らない。戸惑いつつも、彼の笑顔に満足していた。

「その……悪かった!おれ、フミのこと嫌いなんて言った。こんなに優しいやつと思わなかった。」

よろしくな、と手を差し出してきたルフィはニコリと笑う。

ーーーー友達に、なれるかな。

そんな期待をして、フミは差し出されたその手を握りしめた。友達になる誓いの握手だ。その日フミは軽い足取りで帰路についた。

家に帰ってきた娘に、ある疑問が浮かんだ。

「あれ?巾着袋は完成したの?」

「うん!!ルフィにあげたんだ!すっごく喜んでくれたよ!」

友達ができたのだと嬉しくなり、フミを優しく抱きしめる。もうそろそろ帰ってくる夫はきっと男の子だと知れば悲しむのだろうけど。フミの初めての友達がルフィで良かったと、今度お礼をしなければならないとそう考えた。



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