柔らかい手を握ると、フミは照れたように笑った。その顔が可愛くて、思わず手に力が入る。

「行ってらっしゃい!」

「ルフィ!お土産よろしくな!」

サニー号を振り返ると、ナミとロビンが手を振り、船番のウソップが羨ましそうにおれ達を見ていた。おれはウソップ達に手を振り返し、改めてフミの姿を見る。
ナミとロビンから聞いたけど、「ゆかた」と言うらしい服を着て、髪の毛を団子みたいにしていた。

「似合うなァ」

心の声は、出ていた。
フミはまた、照れたように笑う。

「ルフィも、似合うよ」

おれも、「ゆかた」を着ていた。
船に帰った瞬間に、ナミに連れ去られたおれはこれを着せられた。黒い生地に赤い帯というものを、されるがまま。フミが喜ぶから、と言い聞かせられて、腹が苦しいけど耐えた。フミはナミの言う通りすげェ褒めてくれて嬉しい。

「ルフィも、浴衣着てたなんてビックリしたぁ」

「フミの口、ぽかーんってなってた」

「ナミちゃんが買ってるなんて思わなくて」

「見惚れてたろ?」

「み、見惚れてなんて!」

「おれは、見惚れた!フミのために作られた服だな」

「褒めすぎ…」

とか言いつつ、フミの顔は真っ赤だ。それは夏島が暑いせいではないはず。

コロン、コロン。かわいい足音が響く。ちょこちょこと歩幅が狭いフミは歩いてるだけで可愛い。

「フミー?」

「ん?」

「好きだぞ」

「わ、私も、好き」

キスしたくなって、道端でしたらフミは怒った。でも、可愛かったから仕方ない。

「ひ、人がいっぱいいるのに!」

「フミが可愛いから悪ィんだろ?」

「もうっ、ばかー!」

フミは弱い力でおれの腹を叩いてきた。照れ隠しなのは、見え見えだ。
それからは、ナミに貰ったお小遣いでフミの食べたい物を買った。おれはなんでもうまいからフミと同じものを食べる。

「わぁ!わたがしだ!」

「買うか?」

「うん!」

チョッパーの好物がわたがしで、フミはその影響でわたがしが好きになったらしい。島で見かければ、2人は必ず買っていた。
2人分、ふわふわのわたがしを買ってフミに渡す。その目はキラキラしていて、また可愛いと思った。

「ん〜!美味しいー!」

わたがしを口で溶かすフミは、幸せそうな表情を浮かべていた。それだけで、おれは嬉しくて幸せがうつってきて胸が高鳴る。溢れそうなくらい、フミが好きだ。

「楽しいね」

満面の笑みで、おれを見上げて言うフミにおれは頷くことしか出来なかった。その笑顔に、見惚れてしまったからだ。このまま手を握って連れ去って、フミと2人で逃げ出したくなる。何から逃げたいかは分からねェけど、連れ去りたくなった。おれにもよく分からない感情で支配される。胸がはちきれそうだった。

「ルフィ?」

首を傾げて、フミをおれを見つめてきた。どんな強さで、この柔らかい手を握っていたか忘れるくらいおれは混乱している。どんな顔で、フミのこと見てたっけ。どんな話を、してたっけ。
このまま、フミを見つめていたい。柔らかい手を握り続けていたい。

「ルフィ!?」

おれはフミの手を握ったまま、早歩きで人混みを抜けた。おれのわたがしはどこかに落としてしまったけど、そんなことどうでもよかった。
路地裏に入り、灯りが届かないところまで来て、おれはフミを抱きしめる。フミの匂いと少しの汗の匂いがした。

「すっげェ、ドキドキする」

「え?ルフィ?」

「浴衣着て、いつもと違うフミ見て、ドキドキが収まらねェ」

「それは、私もだよ。ルフィ、かっこ良すぎるもん」

そう言いながら、フミはおれの浴衣の隙間から出た胸板に触れる。あー、なんでこんなに可愛いんだ。おれは、フミの頬を掴んでキスをする。わたがしの甘い味がして、それを堪能するように舌を入れた。

「んっ、」

口の隙間から漏れる声に、おれは夢中になった。
何度かキスをして、フミを見つめるとその目にはおれが写っていた。可愛いなァ、ほんとに。

その時、上空でバァァンと音が鳴った。2人で上を見上げると、花火が上がっている。

「わ、綺麗!ルフィ!綺麗だよ!」

「あぁ。綺麗だな」

フミが空を見上げ、嬉しそうに笑っている。たまに、おおー!とか声が漏れているのが可愛い。おれは、花火よりフミを見つめていた。こんなにじーっと見つめてもフミは気が付かない。その顔を焼き付けるように、目を離さなかった。
フミが愛しい。また、胸が締め付けられて苦しい。どう、この気持ちをフミに伝えたらいいか分からない。どうやったら、伝わるんだろう。
毎日、毎日、フミを好きだと思うたびに言葉にしてきたけど、言葉に表せないくらいフミが好きなのに他の言葉が思いつかない。
この胸の痛みを、どうやってフミにうつせばいいんだろう。

「ルフィ、好き。大好きだよ。」

なんで、フミは泣いてるんだろう。でも、その顔があまりにも綺麗で、おれはまた言葉が出てこなかった。

「ルフィ。楽しいね」

「……あぁ、楽しいな」

この時の、フミの涙ぐんだ笑顔をおれは一生忘れないだろう。それくらい、鮮明に覚えている。フミはこの時、どういう思いで花火を見上げていたかは分からない。けど、本当に、花火よりもフミのその横顔が綺麗だった。













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あーーーー!!なんか書いてて泣きそうになりました!!
眩しすぎるぅぅ!!!そして、余命宣告されている彼女はいつでも最後だと思ってルフィとデートしてるんだと思うと、もう!!!無理!!笑


2020/07/02


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