back numberの「わたがし」を小説にしてみました。
メンバー消去番外編を、書くの久しぶりです。リハビリ中。

あの歌は付き合いたての2人だと思うんですけど、付き合いたてではありません。なので、初々しさは少ないかもしれません。



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コロン、コロン。

可愛い足音と共に現れた、愛しい姿にルフィは思わず息を飲む。手を差し出せば、小さな手で握り返してくれた。それは、動いていなくても汗が垂れるような暑い夏島での出来事だ。


島に近づくにつれて、気温が上昇していた。皆、自然に涼しい部屋に籠るようになり、ルフィも釣りさえする気にならないでいた。

「夏島は久しぶりだなァ」

「そうだなぁ、おれは冬島が好きだ」

「お前は冬島出身だもんな」

「おう!ウソップは冬だと鼻が寒そうだな!」

「おい、コラ!チョッパー!」

ウソップとチョッパーの緩やかな会話に耳を傾けながら、フミはルフィの横で縫い物をしていた。
ルフィはと言えば、サンジお手製のバニラアイスを舐めている。

「フミ〜、なに作ってんだ?」

「まだ秘密」

「む、…おれにも?」

「うん、ルフィにも秘密」

ルフィの顔を見ず、黙々と縫い物をするフミの態度が面白くなく、ルフィはアイスを舐めた舌でフミの頬を舐めた。

「冷たっ!ルフィ!?」

「しし、フミが悪ィ」

「もうっ!」

「おいおい!ここでイチャつくなよ!余計に暑くなる!」

「ほんとよ!フミはこっちに来なさい!」

「わかった!」

「あ、フミ、」

フミはタタッと走ってナミの横へ逃げた。その様子にも、ルフィは面白くなさそうに頬を膨らませる。
ナミはフミに自分が食べていたアイスを差し出した。スプーンですくい、フミの口へ運ぶ。

「んー!美味しい!」

「フミ〜、可愛い〜」

「ふふっ、ナミがいちゃつきたかったのかしら」

「ロビン、それは言っちゃダメよ」

「ナミ!おれのフミだ!」

「あー!もうこっち来たら暑いでしょ!」

「おめェらが暑いわ!」

ウソップのツッコミにフミは声をあげて笑った。その笑顔にナミとルフィも大人しくなり、全員でアイスを食べる。
平和な海の上がフミは大好きだった。こうやって笑い合って、皆で他愛もない話をする。それだけで毎日が幸せだった。
それが、ずっと続けばいいのに。フミはそればかり考えてしまう。それは決まって、チョッパーの定期検診の時間が近づいてきた時だ。

「フミ。」

チョッパーがトコトコと近づいてきて、フミを呼ぶ。もう時間か、とフミは時計を見てから席を立った。

「フミ?どこ行くんだ?」

「チョッパーといつもの。」

「また薬のこと教わるのか?」

「チョッパーの手助けしたいから!」

定期検診の口実は、「チョッパーの手助け」だった。看護師のように、皆が傷ついた時にはいつも手助けはしているが、実際は検査を多く行っている。
ルフィはまた唇を尖らせて、仕方なくフミを見送った。最近、フミの笑顔に元気がないのは気がついていた。

「今日は、血液検査だ。」

フミはその言葉を聞いた途端、泣きそうになる。注射が苦手なことは、チョッパーも知っていたが定期的に行わないと変化には気が付かない。
フミも何度も血液検査をしているが、慣れることはなかった。くまのぬいぐるみを握りしめ、顔を背ける。チョッパーは素早く、注射器でフミの腕に針を刺した。

「うっ、」

「フミ、頑張ってくれ!」

フミを、救いたい。万能薬になるために。
フミの頬を涙が伝う。血液を無事採取し、針が抜かれた。そして問診など、いつも通りの検査が行われる。
検査を終え、雑談を交わしながら薬の知識を教わっていた時、フランキーの声が聞こえた。

「島が見えたぞー!」

その後、すぐに足音が医務室へ近づいてくる。チョッパーもフミもそれが誰だかすぐに分かった。

「フミ!チョッパー!島だ!探検しよう」

ルフィは上陸時、必ずフミを側に置く。恋人として、守りたいと思っているからだ。途中ではぐれてしまう事はよくあるが、いつもフミを探し出すのもルフィである。

「フミ、泣いたか?」

「え、あ、匂いのきつい薬を嗅いじゃって…涙が出たの」

「そっか、大丈夫か?」

「うん、大丈夫。ルフィ、チョッパーくん、行こう!」

ルフィと、チョッパーの手を取りフミは医務室から出た。フミの変化には特別敏感なルフィにチョッパーはたまにヒヤリとする。まだ病気の事を言ってはいけない、と焦ってしまうからだ。
甲板に行くと、皆揃っていた。今日の船番はジャンケンで負けたウソップだ。

「上陸だー!」

ルフィはフミと島の砂浜へ足を踏み入れる。海辺には海水浴をしている人たちで溢れていた。ナミもあとで泳ごうとフミとロビンを誘っている。
海水浴場を過ぎると、すぐに町があった。この町はリゾート地らしく、賑わっている。女性陣は服の調達のため、ルフィとフミは一度離れた。

「これなにかしら」

「見たことないわね、ワンピース?」

「ほんとだ。どうやって着るんだろうね?」

「お客さんたち美人だねェ!!これは浴衣って言って、着るのにはコツがいるんだ」

「浴衣…可愛いわね!教えてくれる?あと、安くしてね」

「ははっ!気の強い美人さんだ!」

浴衣、というものはこの夏島で定期的に開催される祭りでの正装らしい。色鮮やかな柄と、派手な髪飾りが女心を擽る。
ロビンは黒地に紫の紫陽花が描かれた浴衣。
ナミは白地にオレンジの花が描かれた浴衣。
フミは水色生地にピンクの牡丹が描かれた浴衣。
それぞれの雰囲気に合う浴衣を店主が選んだ。そして、価格もナミの要望通りに値下げされる。

「祭りはちょうど、今夜から開催されるから!かなり賑わうはずさ」

「良い情報ありがと!」

着付けは女性店員にしてもらったため、3人は少し歩きづらい下駄で一度サニー号へ向かう。コロン、コロン、と可愛い足音を立てながら街の様子を見てフミは胸が弾んでいた。

「楽しみだね!」

「フミは、ルフィと2人で行きなさいよ?」

「…いいの?」

「久しぶりにたっぷりデートしてきなさい!」

「服を見に行くのさえ、ルフィは不満そうだったもの」

「ロビンの言う通り。フミを取られて不満ですって顔に書いてたわ」

ルフィは、フミが服が欲しいと前々から言っていたのを知っているからこそ、不満な顔が出てしまったもののフミの気持ちを優先したのだ。フミにだけ、空気の読める男である。そのルフィの気持ちが嬉しくて、フミはすぐに彼に会いたくなった。
縫い物のことを秘密にしたり、チョッパーとずっと一緒にいたり、ナミとロビンと買い物をしたり、ルフィには寂しい想いをさせてばかりだとフミは気がつく。

「サニー号で、髪の毛可愛く結ってあげるから。」

「ありがとう!ナミちゃん!」

「ルフィも喜ぶわ」

「そうだといいなぁー」

ルフィの笑顔がフミの頭の中に浮かんだ。あの笑顔を毎日見ていても、まだドキドキと胸は高鳴るし、惹きつけられる。
浴衣美人の3人がサニー号へ到着した時、ルフィはまだいないようだった。その間に、3人は女部屋へと篭り、身だしなみを整える。フミの髪を櫛でときながら、ロビンはフミに内緒で買ったある物を、"ハナハナの実"の能力を使って女部屋から出ていたナミに渡したのだった。






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続きます。まだ全然歌に突入してない。
久しぶりすぎて、ヒロインがどんな性格だったか忘れてしまった…。

2020/06/28


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