幻影 | ナノ

壁外調査当日となった。班員とは仲が深まったが、彼と班員たちは結局深まらないままだった。それが少し心残りだが、体調も万全で天候も良く何だかやる気が出てくる。

「メイ、帰って落ち着いたら式を挙げる事にした。」
「え……式は挙げないって…」
「遠慮してた事くらいわかる。実は挙げたかったんだろ?」
「うん!リヴァイ、好きよ。」
「ああ、知ってる。」
「リヴァイは?」
「………言う前からニヤニヤしてんじゃねぇ。」
「はやくはやく!」
「もちろん、好きだ。はぁ、さっさと用意しろ。」
「素直じゃないなぁ」

これが壁外調査に行く前の最後の会話となった。
馬を走らせ自分の班へと戻り、団長の出発の合図を待つ。リヴァイに好きと言われただけでこんなにも幸せな気持ちになるなんて。

「なにニヤけてんの。今から壁外に行くってのに。」

相変わらず私とは仲良くしてくれるらしい彼は呆れた目で見てくる。

「失礼ね!でもいいわ、頑張ろうね!」

この言葉の返事はなかったが、小さく頷くのが見えた。
そして団長の合図と共に門が開き、沢山の馬達が走り始めた。リヴァイ班の姿は見えないが、まるで隣にリヴァイがいるかのような安心感があるのは何故だろう。
走り始めて数時間経った。進路は沢山変更しているが私達のいる右翼側に巨人はまだ現れていなかった。班員と少しの会話をしつつ、神経を張り巡らせていた。

「出て来ないですね」
「そうだね…」

なんて会話をした瞬間に出てくるのはよくあることで、突然飛び出してきた巨人に驚きはしなかった。噂をすれば…ってやつである。
馬から下り、近くにあった木にワイヤーを刺す。そして勢いよく巨人の足に斬りつけ、うなじは班員が斬ってくれた。これが討伐補佐というもの。

「ありがとう。」
「いえ、メイさんすごいです。」
「え?」
「判断力と行動力の早さが私達と比べ物になりません。」

褒められれば誰だって照れると思う。顔を赤くしていると彼に叩かれた。

「ちょっと、痛い」
「油断してると痛い目みるぞ」

軽く彼を睨むが、言っていることは本当なので何も言い返せなかった。少し浮かれているのかもしれない、リヴァイと結婚できるということに。

「気を引き締めていこう。」

私の言葉に班員たち(彼以外)は頷いて馬を走らせる。このまま何も起きなければいい、そう信じながら雲ひとつない空を見つめた。

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