ルフィと付き合いだしたからと言って、日常は変わらない。島に上陸する度に男共が付き纏ってきた。 今日も男にナンパされどこかに連れ去られそうになったが何とか逃げてきた。ルフィの誘いを断らずに一緒に上陸すればよかったと後悔しても、もう遅い。 「姉ちゃん、今ならマッサージが無料だよ?」 そう言いながらニタニタ笑って近寄ってきた男2人。マッサージをしていないことなんて一目でわかるし、私の体目当てだって事もわかった。 「遠慮するわ」 「そんなこと言わずにさ…無料だよ?」 「いらない。」 何度断っても言い寄ってくるときは海賊を名乗る。それでも聞かない時は"麦わらの一味"の名前を出す。もしこれでも聞かない時は、懐に収めている拳銃を出すしかない。 「私……かいぞ…」 「え、そのマッサージおれが受ける!」 突然乱入してきた男はルフィでも麦わらの一味でもない。赤の他人だった。 「は、はぁ?野郎はやってねェんだよ」 「そうなのかー?あーあ。無料だと思ったのに………」 しょんぼりと項垂れた彼がこの場から去ろうとするので、利用させてもらうことにする。 「もう遅ーい!いつも遅刻するんだから!」 そう言って彼の腕に抱き着き、口裏を合わせるようにアイコンタクトをする。彼は何事かと言う顔をしたけど、すぐに察して笑顔を向けた。 「わりィな、今日はどこ行く?」 チッ、男いんのかよって台詞が後ろから聞こえ思わずガッツポーズを取りそうになる。 「ごめんね、ありがとう。」 男達が見えなくなった時、腕を離した。彼はルフィに似た笑顔を見せる。 「大変そうだな、男除けも兼ねておれがこの島を案内してやるよ!」 この強引さもルフィらしい。彼にルフィを重ねて見てしまうのはきっと寂しかったからだろう。出来ればルフィにナンパから助けてもらいたかったんだ。 誘いに首を縦に振り、この島の人間だという彼に案内してもらうことにした。これでナンパは来ないし、行きたいところに行けるし一石二鳥とはこの事だ。 「どうしてこの島に?」 「かい……旅人なの」 海賊と言ってしまえば彼は怯えて逃げてしまうかもしれない。そうなれば折角の一石二鳥が無駄になる、だから嘘をついて旅人を装う。 「そっかー、おれいつか海に出たいんだ。すっげェ広いんだろ?」 純粋でキラキラとした瞳が、昔のルフィと重なって見えてしまう。変態になる前のルフィ。別に今となっては戻ってほしいとは思っていない。でもあまりに懐かしくて守ってあげたくなってしまったのは母性本能か何かなのか。 「すごく広くて、でも危険だよ?」 「危険だからいいんだ、何もないより楽しいだろ?」 彼はきっと海賊になりたいんだと察した。ルフィの表情に本当にそっくりで見惚れてしまった自分は最低だ。"浮気"と言われても言い訳できない。 「ごめん、私もう行かないと。」 「え……まだ全然案内してないし……それに…もっと話だって…」 「お迎えが来たの」 遠くの方に見える麦わら帽子に赤いベスト。大好きな人で、私はルフィを裏切る事なんて絶対に出来ないと思う。恋人の前に船長なんだから。 「私ね……海賊なんだ。嘘ついてごめんね。」 「海賊!?お、おれ海賊になりてェんだ!で、ゴールドロジャーみたいな海賊お……」 「海賊王は駄目。」 「な、んで……」 「海賊王はうちの船長の夢なの。」 海賊王になるのはルフィ以外の誰でもない。そう信じているからこそ彼の事は応援できなかった。 「おれ……お前の船長より強い仲間を集めて迎えに行ってやる!お前を仲間にして……で、告白する!」 もうそれ告白だよっ!ってツッコもうとしたところでルフィが到着した。彼を睨みつけ、息を整えている。 「これが……船長か」 「うん」 「今日は楽しかった!また会おうな!」 彼は笑顔を見せて立ち去って行った。彼が名乗りをあげて私達の前に現れる頃、ルフィはもっと強くなってるかな。 「誰だあいつ!」 「ライバル」 「ライバル?」 「ルフィもうかうかしてられないよ」 「それより何楽しそうに話してたんだよ。置いて行かれてずっと探してたんだぞ!」 だからそんなにも息が乱れてるのか。はぁっはぁっと息をするルフィに謝罪し、手を握った。 「手を握るのは初めてだね」 「どうした?今日は積極的……」 「改めて、ルフィの事が好きってわかったの!」 「おれも好きだ!!で、何があったんだよ」 「教えない!」 「あいつと何があったんだ!!」 どうしても気になるらしいけど、今後彼の事についてルフィに話す事はない。彼と再会するのを楽しみに、ルフィの夢を全力で支えようと心に誓いサニー号に向けて一歩踏み出した。 END 戻る ×
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