特に気にした様子もなく、大丈夫だという意味を込めて微笑んでくれた。その笑みに頬を染めながら、出された手を優しく握った。大人になった今でも手を繋ぐのは恥ずかしい事だと思ってしまう。そんな内気な私とは対照的に、顔色を変えずにやってしまうエルヴィンは流石だと感心した。

「ごめんなさい、家でお酒でも飲みながら花火を見ようって言ってたのに……」

浴衣を着たいがためにお家デートから祭りデートに変換したのは私だった。

「なまえの浴衣を見られるのなら構わないさ」
「キザな事言って……」
「たまにはいいだろう。」

エルヴィンも浮かれているのだろうか。いつもとは違う様子に頬が緩む。楽しいなーなんて今の幸せを噛み締めながら、綿あめの店に立ち寄った。たまに食べたくなる味なんだと熱弁すれば笑われたけど。

「んー!甘くて美味しい!」
「なまえは本当に美味しそうに食べるな」
「食べたくなる?」
「食べる姿だけで満足だ」

可愛いなんて滅多に言わないのに、今日に限って私の耳元で囁いてくる。やっぱり久々の祭りデートに浮かれているんだ。エルヴィンも私も。

「子供がいたなら取り合っているだろうな」

“子供”という単語に胸が高鳴った。エルヴィンとは結婚して何年か経つけれど、子供の話はしていなかった。今でも十分幸せだけど、子供がいらならもっと幸せなんだろうか。エルヴィンは子供がほしいのかな。

「子供……欲しい?」
「欲しくないと言えば嘘になる。だが子供が出来ればどちらかが仕事を辞めなければならないかもしれない。」

“子供”というのは色々と大変だ。それはわかってる。エルヴィンも私も仕事が忙しいし、辞められるかわからない。だけど……

「私は欲しいよ。仕事を辞めてもいい。」

私の言葉を聞いたエルヴィンは少し驚いたような顔をした。こんなにも私が本気だなんて思わなかったんだろう。少しの間悩んだ後、エルヴィンは私と目を合わせゆっくりと口を開いた。

「なまえがそこまで言うのなら今夜にでもつくってしまおうか」
「こ、今夜!?」
「浴衣を脱がせるのもいい」
「エルヴィン!ここ外だよ!!」
「ああ、だから帰ろう。」

私の手を強引に引いて帰ろうとするエルヴィン。いやいや言いながらも付いて行ってる私もどうかと思うけど。背中で上がる花火をちらりと見て、今度は家族三人で来たいなと考えるだけで緩む頬を必死に抑えた。

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