木が五本程生えていた。馬から降り、立体起動に移った時3m級の巨人も遠くの方からデブに向かっているのに気がついた。木があれば二体くらい何とかなるほどデブには実力がある。まずは10m級を仕留めないと、と頭で削ぐイメージをする。ニタァとまだ笑っている巨人のうなじ近くにワイヤーを刺し、ガスを吹かせた。

ドォォン

大きく巨人が倒れる音がして、シューッと蒸発するかのように煙になる巨人を見下ろすデブは手についた血をリヴァイに貰ったハンカチで拭いた。

「はっ、奇行種!?」

そう言ってしまう程、奇行種というものは厄介だ。今、3m級の巨人はデブに近づかず一定の距離で寝転んでいる。襲う気は今のところ無いらしい。

「逃げさせてもらうからね!」

そう大きな声で悪態をついてデブは愛馬に跨った。リヴァイ班に戻ろうと駆けているとまた後ろから追って来た。止まると一定の距離を空けて突っ立っている。
このままリヴァイ班に連れて行くわけにもいかない、そう思ったデブは進路を変えて駆け出す。後ろからはまた追って来ていた。



**




「デブ……遅いね。」

ペトラの声にオルオは頷く。

「巨人に出くわしたか……」
「けどデブは強いから大丈夫だよね、それかデブの事だし迷子とか……」
「それか美味しそうな実を見つけたとかな。」
「あ!それだ!」

ペトラはそんなデブを想像して笑みを浮かべるが、頭の中ではどうかこの想像が当たってほしいと心から思っていた。複数体の巨人に会い、最悪の事態になっていたのだとしたら……兵長は……、とペトラは前を駆けるリヴァイを見た。

「兵長、心配ですか?」

エレンの言葉に、何を聞いてるのじゃ!!とペトラは心の中で叫んだ。そこは空気を読んで聞かないのが礼儀だとペトラは思っていたから。

「ああ、心配だがデブを信じてるからな。」
「え………」

兵長でも心配するんだ、とペトラは少し失礼な事を考えていた。

「なんだペトラ。」
「いえっ……」
「惚れた女が帰ってこねぇんだ、そりゃ心配するだろうが。俺も人間だ。」

いいな、と思ってしまったペトラは自分を殴りたくなった。リヴァイに恋愛感情は無いが心の底から尊敬していた。そんな彼に心配されるなんて羨ましい話だ。いいなと思ったと同時にデブを守りたいと思った。親友を守りたいし、憧れの人の恋人を守りたい。

「様子を見に行ってきましょうか」
「いや、行かなくていい。」

リヴァイはそれだけ言うと顔を前に向けてしまった。どうか無事でいて、とペトラは心の中でただ祈るだけだった。


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