調査兵団に入ろうと思ったのはエレンがいたから。じゃなくて、母が壁外で行方不明になったから。遺体も遺品も見つからずに、ただ帰ってこなかった。幼い私だけを残した母が、まだ壁外にいるんじゃないかと思って、調査兵団に入りたいと思った。そのために幼い頃から訓練してきたし、エレンたちと出会ってからも訓練し続けた。だからか、訓練兵になってからも『優秀』と言われるようになった。

「最後、自慢いれてくんなよ。」
「意地悪ー!」

どうして調査兵団に入りたいのか、それを恋人になったエレンに話した。初めての恋人にウハウハしてしまうのはたぶん私だけ。

「それに、エレンもいるしね!」

そう言うと顔を赤く染めて、顔をそらすエレンが可愛く見えた。やっと運命の相手を見つけたと、自慢して回った先日から訓練兵の間で私たちの関係を知らない人はいない。恥ずかしかったのか、エレンは顔を真っ赤に染めていたけど。

「もう他の男、好きになるなよ。」
「えー?それはわからないなー。」
「特にジャンとか。」
「一回好きになったよ。ああ見えて優しいんだよ。」
「はっ、どこが」

機嫌が悪くなったエレンも愛おしく感じてしまう。もうエレンを裏切りたくない。エレンだけを好きでいたい。

「エレン、私を見張っててね。」
「どういうことだよ。」
「どこにも行かないように。」
「わかってる!」

ニヤリと笑ったエレンは私の頭を乱暴に撫でた。死ぬ日はそう遠くないと思う。その日までエレンを愛していたい。エレンを悲しませたくない。こんなにも大好きだから。

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