ガチャンッとノックもせずに開かれた扉に驚いて、飛び上がったモモに元気じゃねぇかと呟いたのはリヴァイだった。その手には桃が乗った皿がある。

「へっ、兵長!ノックくらいして下さい」
「熱があるなら寝るくらいしろ。」

もちろん熱などないモモは部屋に戻った後、ソファに座って本を読んでいた。熱がないのがバレないよう、ここは大人しくベッドに移動する。けれど突然のリヴァイの登場に、動揺を隠せないのは心底惚れているからだった。

「土産の桃だ」
「お土産買ってくれたんですね!」

リヴァイが買ってきた事が嬉しいモモは笑顔になる。その笑顔にやられているとも知らず、皿を受け取り桃を頬張った。

「美味しい!すごく甘い。内地の桃なんて高そう……でも美味しい!!」

柄にもなく、買ってよかったと思っていたリヴァイもモモに心底惚れているのだろう。
バチッと初めて目が合ったが、モモはすぐにそらしてしまった。

「内地に行ってる間、何かあったか」
「……い、いえ!何も!」
「何もねぇのに、その態度の変わりようは何だ。」

内地に行く前は色々突っかかってきたモモだったが、今は避けるように目も合わさない。リヴァイがショックを受けているとは夢にも思っていないモモは口ごもる。

「………内地は楽しかったですか?」
「仕事だ、楽しいもクソもあるか」
「仕事……」

仕事だったんだ……ホッと安心して、息をついた。リヴァイはといえば、なぜそんな質問をしたのかと疑問に思っている。

「話をそらすな。態度が変わった理由を言え」
「変わってないですよ」
「じゃあ目を合わせてみろ。」
「できません!」

顔がみるみるうちに赤くなっていくモモをみて、リヴァイはピンときた。

「まさか……」
「なっ、何ですか」
「やっと自覚したか?」
「自覚?」

リヴァイはベッドに座っているモモの肩を押し、二人は倒れこんだ。リヴァイに馬乗りにされ、逃げることの出来ないモモの顔は本当に熱があるのかと疑うほど赤い。

「ペトラと二人で内地に行ってどう思った。正直に答えねぇとこのまま犯す」

もちろんリヴァイは犯すようなことはしない。けれどそんな嘘を真に受け、顔を真っ青にしたモモはゆっくりと口を開いた。

「…………胸の辺りが痛かったんです。オルオさんが言うには……その…嫉妬だと。」

蚊の鳴くような声だったが、リヴァイはちゃんと聞き取った。あまりの愛おしさにモモの髪を無意識に撫でている。その手つきが心地いいのか、モモは特に何も言わなかった。

「兵長は…まだ私このこと好きでいてくれてますか?」

告白はされたが、もう気持ちが変わっているかもしれないと恐る恐る聞いた。

「惚れさせると意気込んだ男が、すぐに変わるわけねぇだろ。」
「つまり………兵長も……」
「ああ、お前と同じ気持ちだ」
「まだ好きって言ってなっ…んん!?」

まだ愛の言葉も言っていないにも関わらず、リヴァイはモモにキスをして抱きしめた。年の差を考えると親子と間違えられても仕方ない二人だが、心から愛し合っているのだから年なんて関係ないだろう。

「……人を好きになるってこういう事なんですね。」
「また他の男に目移りしたら、どうなるかわかるな?」
「……はい、兵長以外興味ありません!」
「ならいい。」

リヴァイはフッと小さく笑った。その顔があまりにかっこよく、もっと笑えばいいのにとモモは心の中で思った。

それから二人は幸せに暮らしましたとさ。と終わりたいところだが、まだこの話には続きがあった。

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