エレンとモモは数日間目を合わせれば逸らし、会話は全くなくなってしまった。食堂での席も常に離れて座っている。どうにかしたいと思っていたが、中々話しかけられないモモだった。
そんな二人を知ってか知らずか、久しぶりにハンジが旧本部にやってきた。食堂で集まっていたリヴァイ班は揃って逃げる体制を整える。

「やあ、リヴァイ班のみなさん」
「分隊長ー!」

仲の良いモモとハンジは共に笑い合い、軽いハグを交わした。それに少し顔を顰めたリヴァイには誰も気がつかない。

「エレン、また新しい実験をお願いしていいかな?」

一応確認はとるものの、エレンが嫌と言ってもリヴァイの力によって無理矢理実験は行われる。エレンは大きく頷いた。

「今回はいつもより少し危険なんだ。死ぬことはないだろうけど………その…」
「早く言え。」
「身体の一部が無くなったりするかも……」

モモはパッとエレンをみた。気まずい雰囲気など忘れて、ただエレンが心配だった。本人はモモの視線には気づかず、息を飲んだ。身体の一部が無くなるかもしれないと言われて笑っていられる人なんてこの世にはいないだろう。

「それでもいいかな?」
「………はい。」

エレン、と名前を呼びそうになってモモは慌てて口を閉じた。が、もう一度口を開く。恐れて、少し足が震えているエレンを見過ごす訳にはいかなかった。

「エレ……」
「モモ、抱きしめていい?」
「なっ!?」
「許す訳ねぇだろ。」

弱々しく言ったエレンにモモも少し考えたが、そこでリヴァイが割って入った。二人とも驚いた顔で眉間に皺を寄せるリヴァイを見る。

「口聞いてねぇと思ったら、抱きしめていいかだと?次の実験も余裕そうだな、エレン。」
「……すみません…」
「重い空気を共同の空間に持ってくるな、今度は容赦しねぇ」
「つまり、仲良くしないと許さないって事だね?」

わかりにくいリヴァイの表現をハンジが言い直す。それであっているのか、リヴァイは何も言わなかった。言い方がキツいだけで言っている内容は優しいのをリヴァイ班全員わかっていた。

「エレン。」

モモが手を差し出す。握手をしようと言うことだ。エレンも笑顔で握り返す。元に戻ろう、幼馴染だった頃の関係に、という意思がその握手には隠されている。

「じゃあ、実験は明日。」
「兵長、明日エレンは馬小屋の掃除では?」
「細かい事は気にしちゃ駄目だよ。」

ペトラの言葉を丸め込むハンジに、リヴァイは諦めて明日の実験を許すしかなかった。
モモとエレンはと言うと、目を合わせて笑い合う。エレンと元に戻れて良かったと心の底から思うモモだった。

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