兵長からの告白を思い出す度に熱くなる私の体は正直だ。エレンの事が好きだと言いつつも、兵長にときめいてしまっている。エレンに申し訳なくて、顔を合わせられなかった。避けている様な私の態度が疑問だったのか、エレンは部屋を訪れてきて、眉を寄せている。これは怒りを表しているのか。 「なんで避けてんだよ。」 「単刀直入だね。」 もう少し焦らしてくるのかと思いきや、扉を開けた瞬間から問い質してきた。ここは嘘をついても通用しないと思うから、正直に話すことにした。 「兵長に、好きだって言われて……」 「好きになったんだな、オレへの罪悪感で避けてたってことかよ。」 「ちょっと待ってよ!好きになってない!」 「じゃあ、なんで……」 今にも泣きそうな表情を見せるエレンを私は裏切る事はできない。こんなにも私を愛してくれる人なんてエレンくらいだ。私が何度フっても、私だけって言ってくれる。 「告白される事が無かったから、嬉しかったのかもしれない。ううん、嬉しかったの。こんな事思ってる私をエレンに見られたくなかった。エレンに、嫌われたくない。」 これが私の本音なんだ、と声に出してみて初めてわかった。俯いているエレンが今何を考えているのか私にはわからない、でも思っている事は全て伝えた。エレンもわかってくれると思う。だって、愛してくれているから。 「モモは……誰が好きなんだよ。」 「え?」 「オレか?リヴァイ兵長か?それともオレに愛されてる自分か?モモは、オレが好きなんじゃない。オレに好きだって言われる自分が好きなんだ。」 「何言ってるの。そんな訳…」 「誰かに愛されないのが怖いんだろ。だから誰かを好きになって、そいつが振り向かないってわかったら次の奴に乗り換える。」 違う違う違う違う。否定したいのに、喉に何かが痞(つか)えて言葉が出てこなかった。そんな訳ない、私はエレンが好きなのに。 「愛してくれるなら、モモは誰でもいいんだよ。」 「……っ!……ちっ…ちがっ!!」 「オレはモモが好きだ。けど、オレじゃモモを幸せにできない。」 「なっ…何言って…!」 「オレが一生愛してやるって言いたいけど、それじゃあモモは何も変わらねぇ。だから別れよう。」 「エレン。」 「泣くなよ………抱きしめたくなる。」 グッと握られてるエレンの拳は震えている。エレンが愛してくれているのはわかってる、それにその愛が心地よかったのもわかる。私は自分に向けられる好意が欲しかっただけ。エレンが欲しかったわけじゃない。最低だ、最低な人間だ。悔しくて恥ずかしくて悲しくて、涙が止まらない。 「モモが本当に人を好きになれるように、オレは側にいる。」 「……エレン、ありがとう。気付く事が出来たのはエレンがいてくれたから。」 エレンの目は潤ってる。その瞳を見ると心が痛んだけど、もう抱きしめる事も出来ない。エレンは私に背を向けて扉から出て行った。 好きになるって何だろう。恋ってなんなんだろう。わからないわからない。頭が痛い。私は逃げるようにベッドへ倒れ込み目を閉じた。考えるのは起きた時でいいや。 戻る |