ハタキを使って掃除するモモの後ろ姿を見つめる。書類に集中できるわけもなく、パタパタという音だけに集中した。惚れた宣言をして俺の中でもあいつが好きだと理解した。が、あいつはエレンと場所も考えずに甘々とした雰囲気を醸し出す。そんな二人を一度は蹴ってやろうかと思ったが、そこは惚れた弱みだ、何もできねぇ。あんな新兵に負けてたまるか、と俺は声をかけた。 「モモ、次の休暇はいつだ。」 「確か……3日後です。」 振り返ったモモはどうしてそんな質問をするのかっていう顔をしている。顔に出てるが、何も言わずに続けた。 「内地に出掛けるか。」 「え、私もですか?」 「他に誰がここにいる。」 「そうですよね……。二人っきりでですか?」 少しは意識してるってことか。そうじゃねぇと困るが、顔を少し赤く染めるモモの態度は予想外だった。 「エレンは…………」 「エレンは休暇じゃねぇ。休暇だとしても俺はあいつを連れて行く気はない。」 「でも……」 「嫌なら断ればいい。他の奴を連れて行く。」 モモは目線を俺に向けたまま黙った。嫌なのか嫌じゃねぇのかハッキリしろ、と言おうとした瞬間にモモは首を横に振った。 「嫌じゃ…ないです。」 クソメガネがロリコンロリコンと騒いでいた意味を少し理解した。エレンにくっついて回る金魚の糞みたいな奴だと思っていたが、今は抱き締めたいと思っている。 「ほう。奪う機会が生まれるかもしれねぇな。」 「奪う!?」 「容赦はしねぇ。」 こんな年下相手に何やってんだって言われるかもしれねぇが惚れたものは仕方ない。モモが俺に落ちるまで、落ちてからも好きでいるつもりだ。俺は目の前のこいつと違って一途なはずだ。 「どうして私何ですか?人類最強のあなたなら選び放題なはずなのに。」 「そういう所だ。」 「どういう所ですか。」 「バカ正直な所だ。」 最初に出会った頃、こいつはエレンしか見えていなかった。俺を見て愚痴を零し、エレンには向けないような嫌そうな顔をした。そんなこと初めてだった。最初は胸糞悪い気分だったが、そういう女を俺は探してたんだと今は思う。 「好きだ、モモ。」 モモはといえば、真っ赤な顔をして出て行った。掃除が途中だとか、なんで逃げるんだとか言う前に俺は気分がいい。側に置いてあったハタキを持ち、部屋の掃除を始めた。 戻る |