エレンが泣きそうな顔になっていて、どうすればいいのかわからない。ただ、私のせいで辛いんだと思う。私が迷ったりするから、一途じゃないからエレンは不安なんだ。ゆっくりとエレンに近づいて、前から抱きしめた。今朝飲んだスープのいい匂いがする。そういえばジャケットに零して焦ってたのを思い出した。

「三度目の正直だからな。もうどこにも行くなよ。」

大きく首を縦に振った。もう迷わない。エレンを不安にさせたくないし、私をこんなにも愛してくれるのはエレンだけだと思うから。この腕を離したくない、ずっと側にいたいはず。それでも昨晩の兵長の顔が思い浮かぶのはなぜだろう。体が熱くなったのを覚えてる。

「モモ、キスしろよ。」
「え!?」
「好きなら、オレと一緒にいるなら、キスしてくれ。」

真っ赤な顔して恥ずかしいくせに、私の気持ちを確かめたいらしい。私は迷うことなくエレンの唇にキスを落とした。エレンがいればもう何もいらない、それくらいエレンを好きだ。

「えー!!!君たちそういう関係だったの!?」

聞き慣れた声がした。でもどうして旧本部に、しかも地下牢にこの人がいるんだろう。興奮した分隊長は眼鏡を光らせて私とエレンを交互に見ては、奇声をあげている。厄介な人に知られてしまったものだ。調査兵団に広まるのも時間の問題だろう。

「でも、モモ。リヴァイは?」
「兵長は…………」
「さすが男タラシだね!私は誰でもいいけど!はやくモモが帰って来てくれれば!」

分隊長はそんなにも私の事を想っててくれていたのかと感動したのに、ただの話し相手が欲しいだけらしい。もうずっとここにいようかな。すると足音がして地下牢の入口を見ると兵長がいた。昨日の事があったから何だか気まずい。

「エレンを起こしに行けってクソメガネにしか言ってねぇはずだが。」

寝不足なのかいつもより目つきの悪い兵長に睨まれて足が震えた。エレンに会いたくなったからなんて言えない。どうしたらいいものか。兵長に嘘が通じるとも思えないし。

「兵長!オレが起こしてくれと昨日頼みました!」

エレンが私を守るように前に出てくれた。そんな後ろ姿にキュンときてしまって、顔が熱くなるのがわかった。でもすごく兵長からの視線を感じて、熱い顔も冷めてしまう。とにかく怖いです兵長。

「ほう。エレンよ、てめぇは庭と全廊下の掃除をしろ。それまで飯は食うな。」
「はいっ!」
「モモ。」
「は、い!」
「お前は俺の部屋だ。」

えっ。と私とエレンの声が合った。兵長は自分の部屋の掃除は絶対に人に任せたりしない人。そんな兵長からは想像できない言葉だった。ハンジ分隊長も口をアングリと開けている。

「モモはリヴァイの部屋?」
「間抜け面しながらこっち見るんじゃねぇ。」
「いや、でも………」

分隊長はまだ何か言いたそうな顔をしていたけど、兵長が睨んでいた為何も言えない。エレンは固まって動かないし、兵長がもう一度私に部屋に来いと言うから頷くしかなかった。

「兵長は………モモが……」
「あ?」
「いえ、すみません。」

エレンは何かを言いかけて止めた。兵長はそれ以上エレンに何も聞かなかったけど、私は少し気になった。でも昼食だと怒られ地下牢から出て食堂の席についた頃にはそんなことも気にならなくなっていた。ご飯の後に桃が出されてそれだけでご機嫌になったことは言うまでもない。

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