「兵長補佐ァ?」
「そうよ、敬いなさい。エレン」

はぁ?何言ってんだこいつと言う目で見てくるエレンと、傍にいた兵長。兵長補佐と言ってもあの完璧な彼に補佐なんていらない。だから雑用をしたりたまに訓練をしたりしている。だから敬語は使わねぇよ、そう言われているような目だった。

「エレンのバーカ!」
「何だよそれ!」
「知らない!」
「何で拗ねてんだよ。」

本当に私のこと好きなのか、と疑うくらい口の悪いエレン。そんな事口に出した日には巨人になって食べられるかもしれないけど。いや、笑えない。

「モモ。」
「はい!兵長!」
「今までに好きになった奴の名前をあげてみろ。」
「えっと、初めてはエレンです。次はアルミンでその次はパン屋さんのお兄さん。駐屯兵のハンネスさんに、八百屋のおじさん。エレンのお父さんに隣の家の男の子にライナーににジャンにコニーにベルトルトそれから……」
「もういい。」
「今は兵長です!」

呆れた様なため息が旧本部の至る所から聞こえた気がする。そこは慣れてるからいいんだけど、兵長に呆れられるとショックだ。

「父さんも好きになってたのかよ。」
「あっ、エレンには隠してたのに。」

ギロリと睨まれて兵長の背に隠れる。私もエレンを睨み返していると、兵長が急に後ろを振り返ってきて目が合った。

「交際を始めた事は。」
「エレンが初めてでした。と言っても二回目ですけど。」

いつも一方的に好きになって、全力でアピールして気が付けば違う人を好きになってることが多かったから。この前のエレンとの交際が初めてだった。私の言葉を聞いたエレンの顔は耳まで真っ赤になってる。可愛いなァ。

「エレンよ、どこまでいった。」
「な、何を聞くんですか!!」
「あ?さっさと答えろ。人類の為だ。」
「人類の為なんですか?………キスまでです。」
「真実なんだろうな、モモ。」
「はい、キスまでです。」

エレンは恥ずかしいのか手で顔を隠してるけど、耳が出てるから意味が無い。可愛いエレンにキュンッとしてしまい、首を振って忘れる。兵長の方を見ると、彼も私を見ていた。

「俺が言う事は三つ。親の死から逃げるな、桃は控えろ、一途になれ。以上だ。」
「えっと……一つ目はわかりますが……二つ目と三つ目は……」
「二つ目と三つ目を守る事が出来れば、一つ目も必然的に守れる。」

つまり、桃を食べないことと一途になることができれば、親の死から逃げずに済む。そういうことだろうか。桃を控えるのはどう考えてもできそうにないけど、一途になれは頑張れば出来るはずだ。

「ずっと兵長を愛してます!!」

兵長は目を少しだけいつもより開いて驚いていた。こういう事じゃないんだろうか。一途って何だろう。

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