両親は調査兵団分隊長だった。母も父も分隊長で、愛し合ったいた。母は桃が好きで、調査兵団本部の前には沢山の桃の木を植えていた。私が本部の医務室で生まれた時も、母の側には父と桃があったとか。そんな母は父としか恋愛したことが無かったし、父も一途な男だった。父が壁外調査で亡くなった時、まだ5歳だった私は意味がよくわかっていなかった。けれど母は毎日泣いていた。桃も食べていなかった。そしてその後エレンにも話したが、母は壁外で行方不明になった。 「これが分隊長にならない理由と、一途になれない理由。そして、桃が好きな理由ですね。」 目の前で深刻な顔をするハンジ分隊長とミケ分隊長、相変わらず無表情なリヴァイ兵長、そして事情を知っていたエルヴィン団長。三人の顔を見渡し、そして下を向いた。 「それなら仕方ない。モモは班長ということで話を進めていこう。」 「………てめぇ、ふざけんな。」 「リヴァイ?」 「両親が分隊長だったから何だ。お前に何が起こる。分隊長なら死ぬのか?それならなぜここにクソメガネがいる。分隊長が嫌ならその上を目指せ、分隊長という位はただの通過点にすぎねぇ。それと、何が一途になれねぇだ。親のせいにしてんじゃねぇ。わざわざ人を愛さなくてもいい、巨人を削ぐことだけを考えろ。」 息を吸わずに、兵長は何食わぬ顔で言い切った。私を含めた三人は反応できずにいる。いつも以上に兵長はよく喋る。でも、兵長の言葉は全て正しい。今まで私は勘違いしていた。何でも両親のせいにしていただけだ。 「エルヴィン。こいつを俺の補佐に付けろ。」 「何を言っている?」 「俺が一からこいつを育ててやる。」 「い、一からってリヴァイ!この子はもう十分強いんだよ!?」 「肉体の事を言ってんじゃねぇ、心だ。」 心を育てる、意味がよく分からずに首を傾げたのは私だけみたいで分隊長も団長も納得した表情だった。 「モモを、兵士長補佐に任命する。」 「拒否権は………」 「あるわけねぇだろ。」 兵長にギロリと睨まれ、そのまま引き摺られて団長室から出た。その後すぐに地面へと投げられて、尻餅をついた。 「痛いです。」 「行くぞ。」 「あ、待って下さいよ!」 「さっさと来い。」 スタスタと歩いて行ったはずなのに、後ろを振り返って待ってくれる兵長にキュンキュンしっぱなしだ。好きですよ、兵長。そう言えば、無視されるから言えないけど。 「ありがとうございます。」 代わりにお礼を言えば結局無視された。でもまぁいいや。兵長の側にいられるのなら。 戻る |