「あれー?リヴァイ?こんなところで何してんの?」

泥まみれのハンジを引いた目でみるリヴァイは木の影に座っていた。ハンジの手には小さな苗がある。

「別に、ただ休んでいただけだ。」
「訓練中?あ、リヴァイも一緒にやる?」
「何を。」
「わかってるくせに。桃の木の苗を植えてるんだよ!」

じゃーん!と苗をリヴァイの目の前に持っていく。少し土が零れてしまったが、ハンジは気にしていない。気にしているのはリヴァイだ。

「やるつもりはねぇ。ただ見てるだけでいい。」
「モモが気になるの?あんなに喧嘩してたのに。」
「気になると言ってきているのはあいつだ。」
「へー。モモがねぇ。リヴァイは?なんて答えたの?」

リヴァイは何も答えていなかった。ただ、アピールしてくるモモをウザいとは思わず、むしろ悪くないと思っていることに気がついていた。

「まぁ、いいや。はやくモモを返してくれたらそれで。いつまで旧調査本部に置いておくつもり?」
「そんなにあいつが必要か?」
「モモって、強いんだよ。きっと私と同じくらい。」

驚いた、という表情をするリヴァイをみてハンジは笑う。そりゃそうだ、ただの班員が分隊長と同じくらい強いだなんて。

「どうして分隊長になれないんだと思う?」
「なぜだ。」
「モモが断ってるからだよ。」
「あ?」

今度は意味がわからないという顔をするリヴァイ。モモからモモの話を聞いたことがないから、よくわからないのも当然だ。

「モモの親が、昔分隊長をやっていたらしいんだよ。でも巨人にやられたらしくて。分隊長にトラウマがあるんだって。」

親が分隊長やっていて死んだからって自分も死ぬわけじゃない。けれど、モモはどこかそうなるような気がしたのだった。

「後ね、桃が好きな理由も親が関係してるんだよ。」
「………」
「よっぽど両親が大好きだったんだろうね。モモの男タラシにも何か関係があるのかも。」
「あ?男タラシ?」
「知らないの?うーん、言わない方がモモの為なのか?」

モモが男タラシなことをリヴァイは知らない。モモもしたくてやってる訳じゃないから別に悪いことじゃないとは思うハンジだが、リヴァイがどう思うかはわからない。

「そろそろ戻らないと。モモはとっても強くていい子だよ。じゃあね!」

そんなことわかってる、そう小さく呟いたリヴァイの声は誰にも届かない。それよりも、男タラシとはどういうことだと疑問に思うリヴァイの顔はいつもよりも目つきが悪かったらしい。

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