誘拐されてから数日が経った。エレンと別れて兵長に恋をしている、そんな最低な私はただいま桃を食べています。兵長を見ながら。

「あーあ、次は兵長か。」
「ゴホッ…ケホッ…エレンッ」

一人で眺めていたはずが、いつの間にか隣にはエレンがいた。驚き過ぎて桃を喉に詰まらせてしまった。

「結局はオレのところに戻ってくるんだよ、モモは。」
「どうしてわかるの。」
「2回好きになるなんてオレだけだろ?」
「うーん、そうだけど。」

私は1度好きになればもう好きになることはなかった。だけどエレンだけは2回恋に落ちてしまった。だからエレンは信じてくれている私が戻ってくるのを。でも、私は兵長しか考えられない。

「私って最低な女なのかな。」
「ああ。」
「えっ、エレン?」
「その気にさせておいて、捨てるだろ?それでもオレはそんなモモが好きだ。」
「ストレートな言葉をありがとう。」

前ならここでキスの一つや二つしていたんだろうけど、今はそんな気分じゃない。ああ、兵長のパンを食べるお姿がたまりません。昼食を食べ終わり、食器を片付けて兵長の元に向かった。

「兵長!なにかお手伝いすることはありませんか!!」
「特にない。」
「そうでありますか!では、なにかあればお申し付け下さい!!」

人を疑うような目で見る兵長に笑いかける。胸や顔が熱くて仕方が無い。大好きだって叫びたい。

「モモ、何があった。」
「はい?特に何もありませんが!」
「不満があるなら正直に言え。」
「何も不満なんてありません!ここにいるだけで幸せです!」
「話にならない、エレンを呼んでこい。」
「はい!かしこまりました!!」

さっき一緒にご飯を食べたばかりだからきっとその辺にいるはずだ。急いでエレンを見つけ出し、兵長の元へと差し出した。

「何かありましたか?」
「ああ、こいつをなんとかしろ。」

兵長に指を差されてドキリと胸が高鳴る。ん?でも私をなんとかしろってどういうことだ?

「気持ち悪いほど素直になった原因はなんだ。ここがそんなに不満か?クソメガネの元へ帰すか。」
「ああ、こいつ兵長にこっ……」

慌ててエレンの口を塞ぐ。人の手を借りて告白なんて絶対にしたくないからだ。

「エレンと別れてからこうなったんだ。お前らでなんとかしろ。」
「エレンと別れたからじゃなくて、兵長を好きになったから素直になったんです!」


「あ?」
「はぁ。」

兵長に睨まれ、エレンにため息をつかれ。どんなことをされようとも、私は好きになったら周りがよく見えていないらしいからどうでもいい。

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