食べ終わった彼に、地上の世界のことを聞いた。その話があまりにも楽しそうで、憧れと少しの嫉妬を抱きながら、いつか私も行きたいと思うようになった。しらほしといつか母のお墓参りに行くのが夢で、それしか考えていなかったから、地上に行きたいなんて思ったのは初めて。

「空の上は、なにがあるの?」
「島があった。雲でできた島で、黄金もいっぱいあった。」
「雲かぁ。ふわふわ?」
「おう。このベッドより、ふっかふかだ。」

ベッドに手を当て、軽く押してみる。これでも十分ふかふかなのに、これ以上のふかふかが存在するなんて考えられない。それにしても、ルフィが楽しそうに話す。冒険が好きっていうのがビンビンと伝わってくる。

「えみも来るか?」
「……えっ、」
「一緒に海賊やろう!」

数十分前に出会ったばかりの私に、仲間の勧誘をするなんて、信じられない。ルフィがもしそうやって仲間をつくってきたならば、何百人という数になっているんだろうな。

「麦わらの一味は、何人いるの?」
「おれをいれて、9人だ。」
「9!?」

じゃあ、なにを根拠に仲間を勧誘しているのか、そう問えば、気に入ったやつ、と答えた。つまり直感で仲間を集めてきたんだな。私は気に入られたということなのか、そう考えるとなんだか嬉しくなった。

「えみがいれば魚食べ放題だな。」

そういうことか。やっと納得した、ルフィは私を仲間にいれて魚を取ってきてもらおうとしてた訳だ。喜んでいた自分が恥ずかしくなって、一度ルフィの胸板を殴っておいた。

「ルフィは、その、仲間の中に恋人とかいるの?」

ほんの興味本位でそんなことを聞いてしまった。海賊、という職業の分類なのかはわからないけど、恋愛はしていいのか、そもそも恋をしたことがない私だから、職業関係なくただ気になっただけ。私より少し年下の彼に恋人はいるのだろうか。

キョトン、とした顔をしたあと、ルフィは口を開いた。

「おれ、恋とか興味ねェ。」

予想通りというか、その言葉に少し安堵した私はそれでも驚いていた。恋に興味のない人なんて、この世にいるんだ、と。

「わたくしは少し興味があります。」
「えみもあるのか?」
「そりゃ、興味はあるよ。でも、恋なんてしたことないんだけど。」
「おれは、肉があればそれでいい。」

そんな食欲丸出しのルフィの発言に、ぷっと吹いてしまった。素直に、ルフィといると楽しいと思った。ずっと、話していたら楽しいだろうな。

「でも、もし恋をするなら、心から好きな人と恋をしたい。」
「いつか、会えたらいいな!」

そう言ってくれるルフィに笑いかける。こんなにいい人が、危険人物なわけがない、そう考えていた。




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