しらほしが攫われそうになったり、うちの宝が盗まれたり、ルフィが四皇に喧嘩をうっていたり、そんなことは知らずに私はただ自室で悩んでいた。島に残って姫としての使命を果たすか、ルフィたちについて行くのか。 「えみ姫様!麦わらの一味が出航いたします!」 「えっ、もう!?」 急いで扉から出ると一人の家来がいた。確か私が小さい頃から面倒をみてくれている。 「あの、姫様。」 「なに?」 「いえ、いってらっしゃいませ。」 あ。思い出した。お母様が無くなったときからよく私の相談に乗ってくれていたんだ。いつからか、話すことすら無くなってしまったけど。 「いつもありがとう、ルイズ。」 少しだけ悲しそうな顔をした後、微笑んでくれた彼に手を振って港に向かう。ありがとう、ルイズ。私はもう迷わないよ。 「よし、帆を張れェー!出航するぞォー!」 「またな『魚人島』ー!!!」 そう声が聞こえて、慌てて船を追いかけた。決めたんだ、もう迷わない。だからルフィ、待って。 「ルフィっ!!」 「あ、えみ!宴の途中からいねェから心配した。どこ行ってたんだよ!」 海の中から船を見上げる。とても大きなその船はどんな海でも越えていけそうだ。船の上からルフィたちが顔を出して私を見る。 「ルフィ!私、ここで待ってる!」 そう言った瞬間にルフィは目を見開いて驚いていた。その直後にルフィの腕が伸びてきて、私を掴んで引き上げた。 「な、んでだよ!一緒に冒険しよう!夢も見つけよう!」 「私の夢はね、お母様のように立派な女王になること。だからルフィも立派な王になって。私のこと迎えにきて?」 ルフィ以外は驚いた顔をしていた。でももう決めたことだ。この島でしらほしや魚人島民を守りながら生きていく。 「おれは、えみが………」 「それは………また会うときに。」 ルフィの唇を唇で塞げば、どこからか歓声が上がった。ルフィは目を大きく開けて驚いてる。今伝えてしまえば、別れが辛くなるから。また今度会うときに伝えたい。 「ずっと待ってるから。ここで。」 「一歩も出んなよ!他の男について行くなよ!おれが絶対迎えにくるから!」 「うん、待ってる。はやく来てね!」 ぎゅっと抱きしめられたかと思うと、今度はルフィに唇を塞がれた。この島でヒーローの帰りをみんなで待ってるから。 「ルフィ、みんな!ありがとう。無事に帰ってきて下さい!美味しいお菓子や料理を作って待ってます」 「えみちゃん、泣かないで。」 「泣きません、笑います!」 溢れ出そうな涙を堪えて笑う。するとルフィもニカッと笑った 「いってくるな!えみ!」 「いってらっしゃい!」 好きな人との別れは悲しいはずなのに、今はあまり悲しくない。むしろ清々しい。すぐに帰って来てくれると信じているから、全力で笑おう。その大きな背中に私はまたねと叫んだ。 END 戻る |