竜宮城で宴が開かれた。歌って踊って飲んで食べて騒いで、笑いが堪えることはない。こんなに楽しいと感じたのは初めてかもしれない。

「お姉さま、すごく楽しいですね。」
「しらほしが笑顔になってくれてよかった。」
「お姉さまがやりたいことをやって下さいね。わたくしはお姉さまにご心配をおかけしたくありません。」
「私のやりたいこと………?」

やりたくことなんてないのに、しらほしは私を手のひらに乗せて持ち上げた。その大きな瞳と目が合う。

「はい。わたくしのためにお姉さまはそのお命まで捨てようとしました。わたくしはこれ以上家族を失うのは嫌です。だからお姉さまは生きて、お姉さまが楽しいと思うことをしてほしいのです。」

泣き虫な妹が一滴も涙を流さずに真剣な表情で言ったことに驚いた。もう私が守らなくてもこの子は十分強い。私は私のやりたいことをしよう。

「しらほし、ありがとう。」
「お姉さまは泣き虫ですね。」
「しらほしに言われちゃ、ダメだな私も。」

涙を拭って笑いかけるとしらほしも笑ってくれた。しらほしや魚人島のみんなと暮らすか、ルフィたちの船に乗らせてもらうか。答えはまだ決まっていない。

「ルフィと話してくるよ。」
「はい!」

しらほしの手のひらから下りてルフィを探す。確かさっきお肉を食べながら歌をきいていた気がするんだけど。探していると、人魚たちに囲まれたルフィを発見した。

「ルフィっ」

声をかけても人魚たちの声で聞こえないらしく、反応がない。それにしても、胸が痛い。これがなんなのか鈍感じゃない私はわかっている。けど認めてしまったらこの島を離れることを決めてしまいそうで怖い。

「あっ、えみ姫様。」

誰かがそう言ったから、人魚たちもルフィも全員がこちらを見た。ルフィは笑って私を見る。

「えみー!なにしてんだ?」
「ルフィと話したいな、って。」
「おう、いいぞ。こっち来い…!」

ルフィの隣に腰掛けると人魚たちはサンジのほうへ行ってしまった。胸の痛みも引いていて完全にこれはアレだということがわかった。

「冒険の話、聞かせて?」
「聞かせてやるけど、えみの話もしろよ。」
「私の話?」
「えみのこともっと知りてェし。」

私の話と言われても、なにを話せばいいのかわからない。とりあえず好きなものを話すことにした。

「海が好き。泳ぐのも好き。でも海水を感じていたいから漂っているのが一番好きなの。」
「いいなー、おれ泳げねェから。」
「あ、そっか。悪魔の実を食べたんだよね。」

ルフィは頷いてゴムゴムの実のことを話してくれた。その横顔を見るだけで胸が熱くなる。どうしよう、恋に興味が無い人を好きになってしまった。戦う姿も、他愛もない話をする姿も、全部好きだ。

「えみ?どうした?」
「ごめん、これからどうしようか考えちゃってた。」
「おれが無理矢理連れて行ったらえみは怒るよな」
「当たり前でしょ?」

ちぇっと残念そうにお肉にかぶりついて幸せそうな顔をした。ルフィといれば毎日が楽しいんだろうな。けどルフィについて行けば次いつこの場所に戻ってくるかわからない。






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